これまで医学科の臨床実習は、大学病院での臨床実習以外には、大学と同規模の病院である県立中央病院でのみ実習を行ってきました。従って、医学生にとっては、卒業後の研修先を決めるにあたっても、また、初期研修後に自分が目指す医師像を考えるにあたっても、地域医療やプライマリケアに対する教育は不十分で、それを体験する機会も殆どありませんでした。一方で、まれにしか行われない先進医療を中心に学生教育が行われ、学生の興味関心を集めようとしてきました。しかしながら、現実の医療においては、広範な疾病にわたって医療へのニーズがあり、現実のニーズに対応できる医療人を育てることとはかけ離れた教育を行ってきたと言わざるを得ません。本取組における地域医療病院、あるいは行政や保健福祉施設での地域看護実習では、小児から高齢者まで広く存在する医療のニーズを学生の肌で直に体験させ、興味や関心を高めさせようとするものです。その場合、教員が一人一人の学生からのニーズに細かく対応することが必要であり、e-ラーニングを積極的に活用することにより学習効果を高めることができます。遠隔地での学習にあたっては、担当の教員から離れるため、自己学習の姿勢と問題抽出能力と問題解決能力、およびコミュニケーション能力が求められるが、本学がこれまで行ってきた「症例立脚型チュートリアル教育」や「診療参加型臨床実習(クリニカルクラークシップ)」で培った実践能力を活かすことができ、また、地域の医療機関や保健福祉施設のスタッフからのフィードバックも期待できます。
地域医療病院における臨床実習や保健福祉施設における地域看護実習は、大学から距離のある遠隔地(離島や中山間地)での実習となり、病院や保健所などでは、インターネットに接続した端末の環境は整っているものの、すべての福祉施設や診療所、家庭で環境が整っているわけではありません。しかし、学生が所有している携帯電話やPHS端末などの移動体通信が接続できる小型端末(PDA等)や携帯型パソコンを利用すれば、どこでも接続可能で、かつセキュリティーの確保も比較的容易です。
また、この取組の中で、地域医療教育を推進する体制を整備し、附属病院の卒後臨床研修センターと連携することにより、地域枠推薦入試や早期医学体験実習で高まった地域医療へのモチベーションを在学中の環境保健実習、地域医療病院実習、地域看護実習でのe-ラーニングを通してさらに高め、さらに、卒業後の臨床研修につなげていくことが可能となり、地域医療人育成のための一貫した教育プログラムを完成することができます。
(参考)
医学科では、2期にわたって大幅なカリキュラム改革を行ってきました。第1期は、平成13年4月のチュートリアル教育の全面実施のための改革(平成11年度〜平成13年度)であり、第2期は共用試験実施に対応し、臨床実習への診療参加型臨床実習導入のための改革(平成14年度〜平成18年度)です。
1. 臨床医学チュートリアル教育の全面実施
平成13年4月から、医学科4年生に対して臨床医学チュートリアル教育を導入するために抜本的なカリキュラム改革を行いました。基礎医学のうち、病理学各論を臓器別コースに組み込み、それ以外の基礎医学の学習を3年生で終了させるようカリキュラムの見直しを行いました。チュートリアル教育では、講座別の講義枠を廃止し、臓器・系統別の20コースに編成して、提示された課題症例をチューター1名が学生8名を担当する少人数教育で学生主体に自学自習に取り組む症例立脚型チュートリアル学習の方式に変更しました。また、週に3回のコアタイムの中で学生の到達目標が明示されます。講義は、臓器別に該当の週に集め、内科系、外科系の講義に加えて、検査、画像診断などの講義を行いますが、時間数を従来の約半分程度にして、自習時間が確保できるようにしました。時間割はコース別会議やワークショップなどで、継続的な見直しを行っています。
学生は、毎週グループ毎に「症例のまとめ」を作成し、全体発表の時間に代表が発表し、学生が司会をして討論を行い、その後、症例作成者が症例解説を行っています。学生の発表の際には、課題症例毎に「症候・病態からのアプローチ」の視点から発表資料を作成し、プレゼンテーション能力を磨くよう課題を課しています。
基本的診療知識と診療技能については、OSCE実施直前に、3週間の集中講義と実習を行い、演習のできる時間を設けています。また、シミュレータを実習室に設置し、届出のみでいつでも利用できるように主体的学習環境を整備しています。
また、臓器別チュートリアル学習では、対応する臓器の局所解剖実習と放射線の画像解剖の講義をセットで行い、解剖学的知識を臨床で得られるCTなどの画像と対比して学習できるよう工夫しています。また、月に1回、環境保健医学実習を行って、学外の医療・福祉施設や高齢者の家庭を訪問させるなど、体験型実習を並行して実施しています。
2.診療参加型臨床実習の拡大と評価システムの導入、地域医療病院実習の開始
平成13年度に打ち出された共用試験の実施に対応するため、4年次終了時に共用試験が受験できるよう、再度、カリキュラムの見直しを行い、平成18年度中に完成させます。また、臨床実習の改革にあたっては、カリキュラム検討委員会が見直しを行い、診療参加型臨床実習を積極的に導入し、臨床実習ローテーションと実習期間を見直して、42週から51週に拡大して必修基本実習を36週間に増やすとともに、選択実習として9週を確保、関連教育病院である県立中央病院での実習を3週間、地域医療病院での実習を3週間確保しました。平成18年度から改革後の臨床実習ローテーションが5年生に初めて実施されますが、あわせて、同時に臨床実習開始直前の3週間に臨床実習のためのオリエンテーションと臨床腫瘍学の集中講義が初めて実施されます。また、ウェブ入力による臨床実習に関する学生と教員の間の相互評価システムが平成17年度から稼動しました。
看護学科は平成11年度に開設され、平成16年度に大学院を含めて完成年度を迎えたところです。看護学科のカリキュラムの特徴としては、以下の事項が挙げられます。
1.
教室では体験することのできない医療、保健福祉活動、訪問看護等の現場体験を重視し、臨地実習を早期(1年生)から積極的にとりいれ実施しています。
2.
老年看護学が、地域看護学講座の中に位置づけられており、老年看護と地域看護(保健福祉教育)が一体となって、講義と実習を行っています。
3.
地域看護実習の単位として規定の5単位よりも多く6単位に増やしており、保健所・市町村(3週間)、訪問看護ステーション、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム(各1週間ずつ)などで、合計6週間の実習を行っています。
4.
情報教育を早期(1年生)から初めて4年生まで幅広く長期間にわたって実施している。医学部には情報演習室が整備され、入退室管理のできるカードを学生一人一人に発行し24時間利用可能な環境を整備しています。
教育実施体制としては、平成15年に医学部に「教育企画開発室」を設置し、医学部長が総括責任者(室長)となって、医学・看護学教育の恒常的な立案、運営、実施にあたる体制を構築しています。また、教育企画開発室には、医学科長、看護学科長に加えて、助教授(兼任)、助手(専任)を配置して、学務課とともに実務を担当しています。また、教育企画開発室の下には、以下に示す委員会を設置し、それぞれの分野の業務、調整を審議するとともに、全学的な課題やワークショップFDなどについては、医学部長が教育企画開発室会議を適宜開催して、検討を行っています。
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