内視鏡下筋膜下穿通枝切離術が保険収載されました

公開日 2014年04月02日

(平成26年4月:最新治療)

皮膚科 講師 新原 寛之

 

 海外において難治性下肢潰瘍の約85%に静脈うっ滞が関与しているとの報告があります。静脈瘤の治療として圧迫療法が以前より行われており、その有効性が報告されていますが、下腿穿通枝静脈血が逆流を生じた不全穿通枝を伴う静脈瘤に対しては効果が低いとされます。静脈うっ滞性難治性下腿潰瘍症例の63%に不全穿通枝がみられるとの報告があること、太い不全穿通枝の存在する下腿内側遠位部が潰瘍好発部位であることから、静脈性潰瘍において不全穿通枝が重要な役割を担っています(図1)。

以前から、潰瘍部を大きく切開する直達手術(Linton術)にて不全穿通枝切離が行われていましたが、術後の創部治癒遷延などの合併症が問題でした。近年の内視鏡下手術の発達から、1985年にHauerが内視鏡を用いた筋膜下穿通枝切離術subfascial endoscopic perforator vein surgery(SEPS)を報告して以来SEPSが試みられるようになりました。Pierikは39症例でLinton術 式とSEPSのランダム化比較試験を行い、両群間で潰瘍治癒率、潰瘍再発率に差を認めなかったのに対して、術後の創合併症はLinton術式で53%、SEPSで0%とSEPS群で有意(P<0.001)に創合併症が低いと報告しています(図2)。

当院では心臓血管外科と皮膚科とのチーム医療にて下肢静脈瘤の外科的治療を行っております。平成20年からSEPSを先進医療取得目的に難治性下腿潰瘍症例に導入し、手術患者さん全員の潰瘍が治癒しております。今回SEPSが保険収載され、より多くの不全穿通枝を原因とする静脈うっ滞の患者さんに有効な治療が提供できるようになりました(図3)。


 

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