病院長挨拶

 平素より病院の運営に関しまして格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。

 島根大学病院は「地域医療と先進医療が調和する大学病院」を理念として、地域により密着した地域完結型の高度医療を実践しています。診療技術面では、島根県全域を対象とした外傷救急を実践する高度外傷センター、県内で発生した脳卒中に迅速対応する目的で機能強化した高度脳卒中センター、高齢者の動脈弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療を行う総合ハートセンター、da Vinci Xi 2 台を稼働し泌尿器科、消化器外科、婦人科、呼吸器外科へと展開したロボット手術を安全かつ効率的に運用するロボット支援手術推進センター、最新治療機器を整備した高精度な放射線治療など、大学病院の総合力として高度医療を提供しています。最新技術の導入や運用に際しては、より一層の医療安全の体制整備と強化が必要となります。当院では救急・集中治療調整管理センターを設置し、救急・重症管理部門や院内急変時に対応する部門が迅速に活動できるよう部門間の業務調整を行い、効率的かつ安全な医療行為を完遂できるよう支援しております。また、当院は都道府県がん診療連携拠点病院に指定されており、がん診療の質の向上と連携協力体制の構築に関し中心的な役割を果たすことが求められています。在宅緩和ケアとの連携を強化し、よりシームレスで継続的な緩和医療を実践し、本人の人生観・価値観を含め、希望に沿った医療・ケアが行われるよう努めております。

 一方、高齢者医療やがん医療のみが当院に求められる医療ではありません。広く地域の医療にかかわる領域にも力を入れる必要があります。総合診療医センターや総合周産期母子医療センターをはじめ、先天性の心疾患あるいは脳神経疾患を含めた小児医療全体に対する診療体制を強化し、地域の人々が安心して生活できる医療環境を整備しているところです。また、医学部附属施設として、基礎医学で得られた叡智を臨床に還元するため、基礎医学との橋渡し研究の臨床応用にも力を入れています。再生医療センターでは、CAR-T 療法をはじめとする先進的な細胞遺伝子治療、生まれつき骨形成が困難な低ホスファターゼ症に対する高純度間葉系幹細胞製剤を用いた新規治療の開発を行い、新興感染症ワクチン・治療用抗体研究開発センターでは、次世代ワクチンおよび治療用抗体の社会実装にむけた体制整備を行っています。

 当院に求められる医療の本質は利他行です。患者さん中心で質の高い医療を提供するには、医療業務の効率化や患者サービスの向上が重要であり、人工知能(AI)を用いた待ち時間短縮プログラムも開始いたします。近隣の医療機関とより充実した病診連携・病病連携を押し進め、「安全・安心な最善の医療」を病院の総力として提供しつつ、地域に根ざす島根大学病院を実践いたします。職員一人ひとりが一歩一歩着実に本質に向かって邁進し、地域に信頼され愛される病院運営を行う所存でございます。ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

      
                           病院長 椎名 浩昭