肝・胆・膵外科

肝・胆・膵外科の専門分野

 肝胆膵外科では、肝臓疾患、胆道疾患、膵臓疾患を扱っています(図1)

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            疾患図

(1)肝臓疾患

1.肝癌

肝細胞癌根治切除例の術後生存率 当科は原発性肝細胞癌(肝癌)に対する肝切除術において、本邦における草分け的な存在であり、開院以来500例を越える肝切除術を経験しています。肝癌のほとんどは肝硬変などの慢性肝疾患を合併し肝機能が低下しているため、手術手技や術後管理の困難さから、安全に肝切除を施行するには十分経験のあるスタッフの対応が重要であると考え、日々修練に努めています。当科の手術成績は、程度の軽いものを含めた術後合併症の発生率は15.6%で、重篤な合併症は近年全くなく、在院死率は3.1%となっています。遠隔成績では、StageI,II,III,IVa全てを含めた根治切除後無再発生存率は1年74.4%、3年40.0%、5年25.1%、7年20.5%、10年12.9%であり、近年向上したものの満足とは言えず、再発予防に有効な術後補助療法が期待されています。一方、全生存率は1年93.9%、3年75.8%、5年52.6%、7年41.0%、10年26.5%、15年18.6%で、近年の再発後治療の進歩で生存率は飛躍的に向上し、全国の施設の中でもその成績は上位にあります(図2)。非常に再発率の高い疾患ですので、長期生存を得るためには再発してからの治療も重要です。再発病巣の早期発見に努め、肝機能に配慮して、再肝切除や経皮的あるいは開腹下ラジオ波焼灼術(RFA)を行い、安全で効果的な治療を積極的に行っています。さらに他科との連携も密接に行い、経カテーテル肝動脈塞栓療法(TAE)などの治療を駆使して、長期生存例を得ています。また根治的治療のできない進行肝癌に対しても決してあきらめることなく、全身化学療法、肝動注化学療法、放射線療法など集学的治療により対応しています。肝癌に対する化学療法の役割を見直し、さまざまな工夫を加えることにより、これまで治療不可能と思われていたような肝癌でも劇的な効果を多数経験しています(図3)

          

2.転移性肝癌

 また、転移性肝癌に対しても、積極的に切除を行い根治された症例もみられています。切除不能症例にはマイクロターゼ凝固やインヒュージョンポートを用いた動注化学療法などの集学的治療を行い、外来通院でQOLを損なうことなく治療効果を上げています。

3.肝移植

 1989年には、本邦最初の生体部分肝移植を経験しおり、肝癌を含めた切除不能肝疾患に対する肝移植を念頭に、地域の期待に応えられる移植医療体制を準備いたしております。

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(2)胆道疾患

1.乳頭部癌、胆管癌、胆嚢癌

胆道癌切除例の術後生存率 胆道癌(乳頭部癌、胆管癌、胆嚢癌)の多くは進行した状態で発見されるため、治療成績も満足がいくものではありません。当科では、総胆管癌、乳頭部癌に対しては胃を残す幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PpPD)や亜全胃温存膵頭十二指腸切除術(SSPPD)を標準術式としています。胆嚢癌では、早期癌には良好な治療成績が得られていますが、進行癌には多臓器合併切除を積極的に施行し治療成績を向上させています。これまでに経験した胆道癌切除例(乳頭部癌45例、胆管癌120例、胆嚢癌80例)の治療成績を示します(図4)。今後さらに治療成績を向上させるため、積極的に放射線化学療法を加えた集学的治療を導入しています。また、解剖学的局在から治療が難しいといわれる肝門部胆管癌に対しては、切除断端を考慮した尾状葉を含めた広範囲肝切除術、胆道再建、広範なリンパ節郭清術を標準術式としています。全生存率で3年47.9%、5年39.4%、10年39.4%と全国的にみても良好な成績を得ています(図5)。さらに、非切除症例に対しては、経皮経肝胆管ドレナージを施行した後に胆管金属ステントを挿入し、QOLを向上させるとともに化学療法や放射線療法により延命を図っています。

            肛門部胆管癌切除例の術後生存率

2.胆石症、総胆管結石症

 胆道疾患のなかで最も多い胆石症に対しては、腹腔鏡による低侵襲手術を行っています。
また、総胆管結石症には、低侵襲である内視鏡を用いた結石除去を行っています。

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(3)膵臓疾患

1.膵癌

侵潤性膵管癌切除例の術後生存率 難治性悪性疾患の代表とされる膵癌には、積極的な切除を心掛けるとともに、膵頭部癌には胃を残す幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PpPD)や亜全胃温存膵頭十二指腸切除術(SSPPD)を標準術式とし、QOLの向上をはかっています。これまでに経験した膵癌切除約150例の治療成績を示します。当科では、これまでに約150例の膵癌切除例を経験しており、その治療成績を示します(図6)。現在、いわゆる通常型の浸潤性膵癌の治療成績は悲惨な状況であり、24年間の全国膵癌登録約28000例のうち5年生存例は約500例しかないと報告されています。当科では3例の5年生存例を経験していますが、今後、さらに治療成績を向上させるために、切除例に対しても補助療法である放射線化学療法を加えた集学的治療として、新しい制癌剤であるgemcitabinやTS-1を用いた独自のプロトコールで行っています。また、一般的に終末期医療の対象とされる切除不能膵癌や再発膵癌例に対しても、積極的にgemcitabinやTS-1などを用いた化学療法や放射線療法を行い、再発例であっても社会復帰された著効例を数多く経験しています(図7)

           集学的治療が奏功した症例(膵癌)

2.膵良性腫瘍

 膵良性腫瘍に対しては可能な限り膵区域切除を採用し、最小限の膵切除により膵機能を温存させています。

3.膵炎

 慢性膵炎は通常、内科的治療の対象でありますが、内科的治療に抵抗性の慢性膵炎に対しては外科的手術が最終手段となります。しかし、慢性膵炎の外科的治療の成績も不良で、困難を極めます。当科では、慢性膵炎に対しては膵自家移植すなわち膵体尾部を異所性に自家移植することで、膵機能を温存しつつ疼痛のコントロールをはかり良好な成績をおさめています(図8)

                  膵自家移植(術後DSA)

 また、急性膵炎には抗酵素剤と抗生剤の動注療法を他施設に先駆けて導入し、集中治療を行うことで救命率を向上させています。

 以上、一般に外科的治療が難しいとされる肝胆膵疾患に対して、当科では豊富な症例経験をもとに治療に当たっています。また、新しく設けられた日本肝胆膵外科学会の高度技能修練施設に指定される予定です。

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