泌尿器科
泌尿器科の概要及び対象疾患と診療内容
3)尿路・性器感染症
尿路・性器感染症は、泌尿器科医にとって日常最も多く遭遇する疾患の1つです。これは微生物の外尿道口からの上行性感染によるものが多く、尿路感染症では一般細菌が、性器感染症ではクラミジア、淋菌などの性行為により感染する病原体も関与しています。内容は膀胱炎、尿道炎、腎盂腎炎、前立腺炎、亀頭包皮炎などがあり、尿路における基礎疾患の有無により、単純性と複雑性に分類されます。近年の抗菌剤の目覚ましい開発と普及により治療は容易となりましたが、一方では、抗菌剤の種類、使用量の増加に伴う耐性菌の出現が問題となっています。
4)神経因性膀胱・尿失禁
神経因性膀胱とは、蓄尿(尿をためる)と排尿(尿を出す)をつかさどる神経系の異常により引き起こされる膀胱と尿道の統合的な機能障害です。原因として先天異常、外傷、内科的疾患および手術の合併症などがあります。尿失禁は尿漏れのことで、咳、くしゃみ、重い荷物を持ち上げたときに生じる腹圧性尿失禁、激しい尿意とともに生じる切迫性尿失禁、下部尿路通過障害(
例えば前立腺肥大症)により排尿困難がひどく膀胱内の尿が充満しあふれ出る溢流性尿失禁、尿意がないのに膀胱の不随意な収縮が生じ尿が漏れる反射性尿失禁、尿道括約筋機能の欠如や機能低下による真性尿失禁、および睡眠中に無意識のうちに尿を漏らす夜尿症などがあります。治療は薬物療法が主体となりますが、当科では術後の真性尿失禁に対し人工尿道括約筋の留置を行い満足のいく成績を得ております。一方、出産を経験した比較的高齢の女性に多い疾患として、骨盤底の筋肉や靭帯の緩みが原因と考えられる骨盤臓器脱があり、これは翻転した膣壁とともに骨盤内臓器が脱出する状態です。症状として、膣を中心とした局所の不快感、排尿困難、過活動膀胱による頻尿、切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁、排便困難などがあげられ泌尿器科と強く関わります。根治的治療は手術ですが、従来の方法では高い再発率が問題でした。2000年にフランスでポリプロピレン製のメッシュを膣と膀胱、または直腸との間に挿入し、腹圧など力が加わっても膣壁が下がらないようにする手術法(Tension-free
Vaginal Mesh;TVM)が開発され、日本では2005年からこの手術が始められました。当科では2007年9月より6例にTVMを行いましたが、全例とも術後経過は良好です。骨盤臓器脱に悩む患者さんは比較的多いと推測されますので、特殊外来として「女性泌尿器科外来」を火曜日の午後に開設し対応しております。産科、婦人科と協力して、術後の再発率が低く、侵襲度の低いTVM手術の普及を図りたいと考えています。
5)男性不妊症・勃起障害(ED)
不妊症のうち主として男性側に原因のあるものを男性不妊症と呼んでいます。そのうちの90% 以上は精巣における造精機転の障害(精子をつくる段階での障害)のためですが、精路の通過障害(できた精子を運ぶ通路での障害)、精索静脈瘤や副性器の異常(前立腺炎など)が原因になっている場合もあります。それぞれの原因に応じ、外科的治療や薬物療法を行ないます。特に精液中に精子がない場合には精巣から直接精子を採取し(精巣内精子採取術)、産科医と協力のもと顕微受精に積極的に取り組んでいることも当科の特色の一つです。
勃起障害とは,満足な性行為を行うのに充分な勃起とその維持が困難な状態と考えられています。勃起障害の原因は心理的要因と器質的要因によるものに大別されます。前者には心因性や精神病性勃起障害が含まれ、後者には神経性、血管性あるいは内分泌性勃起障害などが含まれます。バイアグラやレビトラはPDE阻害剤と呼ばれ、勃起障害にはまず試みられる薬剤です。心理的要因による勃起障害ではPDE阻害剤を服用することにより勃起が生じ性交が可能となり、それが自信につながります。また、器質的要因による勃起障害でもPDE阻害剤投与で充分な勃起が得られることがあり(治療的診断法といわれています)、この場合はそれ以上の検査を行わずにそのまま投薬を続けます。薬を服用しても勃起がおこらない場合には精密検査が必要です。残念ながら、バイアグラやレビトラは保険外診療となりますので、当科では扱っておらず、希望される患者さんには地域医療連携センターを介して専門医に紹介しております。当科では血管を広げる作用のあるプロスタグランディンE1(PGE1)を陰茎に注射する治療(陰茎海綿体注射)を行っています。作用時間は2~3時間程度と比較的短いのですが、毎週あるいは2週に1回陰茎海綿体注射を繰り返すことで勃起能力の自然回復が期待できる場合があります(陰茎海綿体トレーニング)。
6)尿路結石症
当科では腎結石、尿管結石などの上部尿路結石で自然排石が期待できない場合には、まず体外衝撃波砕石法(ESWL)を行っています(図11)。ESWLで砕石されない場合、腎結石に対しては経皮的腎砕石術(PNL)、尿管結石に対しては経尿道的尿管砕石術(TUL)など内視鏡的治療を行っています。当科では結石の内視鏡的治療、すなわち結石を粉砕する手段としてはレーザーあるいはリソクラスト(削岩機の原理です)を用い優れた治療成績を得ております。膀胱結石、尿道結石などの下部尿路結石は基礎疾患がある場合が多く、まずはそれに対する治療が必要です。尿路結石症は再発防止が重要であり、尿路結石症の治療ガイドラインに沿って食事内容も含めた生活指導を行っています。
泌尿器科の特色
以上のように島根大学附属病院泌尿器科では山陰の中核を担う病院として高度な専門的医療を常に提供しつつ、あらゆる泌尿器科疾患に対応しております。地域の開業医の先生方とは開放型病床あるいは地域医療連携センターを介して綿密に連絡をとり、より質の高い医療サービスを提供し地域医療に貢献しています。また、当科では泌尿器科疾患の中でも尿路および前立腺の悪性腫瘍が研究テーマの中心であり、一般の診療に加え、臨床に密着した、臨床の場に還元できる研究を進めていることが大きな特色です。












