3-B-1-4第17回医療情報学連合大会 17th JCMI(NOV,.1997)

皮膚移植のための Skin-Bank ネットワークの構築

辰巳 治之 , 阿部 清秀 , 村上 弦 , 水島 洋 , 松本 佳隆 , 中村 正弘 , 野川 裕記
札幌医科大学医学部解剖学第1講座 , 札幌医科大学医学部附属病院形成外科 , 札幌医科大学医学部第2講座 , 国立がんセンター がん情報研究部

Construction of the Skin-Bank network for Skin Transplantation

Haruyuki Tatsumi , Seishuu Abe , Gen Murakami , Hiroshi Mizushima , Yoshitaka Matsumoto , Masahiro Nakamura , Hiroki Nogawa

Department of Anatomy, Sapporo Medical University School of Medicine(tatsumi@sapmed.ac.jp) , Department of Plastic and Reconstructive Medicine, Sapporo Medical University School of Medicine , Department of Anatomy, Sapporo Medical University School of Medicine , Cancer Information and Epidemiology Division, National Cancer Center

Abstract: We have been developing a Skin-Bank network for transplantation. In case of severe burn, skin transplantation is the first choice, but the donors and the skin stock are very scarce. On establishing a Skin-Bank, we applied the Internet technology to the Skin-Bank network system aiming at a time-saving and effective one. From WWW home page, required information is sent to the skin-bank mailing list(ML). At the same time, the notification of the arrival and essential information is also sent to the doctor in charge of the skin collection via NTT DoCoMo pocket bell. The ML is seen on the bulletin board of the home page. Taking the security into account, we have just started the MDX (Medical Internet eXchange) Project and are going to integrate the Skin-Bank network into the MDX.

Keywords:Skin-Bank network, transplantation, Medical Internet Exchange (MDX) Project, information network system, World Wide Web



1. はじめに

 
重症熱傷患者を救う方法として皮膚移植がある。一般的に新鮮皮膚の方が優れているという印象が強いが、凍結保存皮膚にも長所があり、新鮮皮膚に比し拒絶反応が弱く長期にわたって生着する傾向がある。また、突発的におきた重症熱傷患者に対しできるだけ早く皮膚移植をすることが望ましく、その為にも予め移植用皮膚を凍結保存し用意しておくことが必要である。そこで、スキンバンク設立に当たって、準備委員会を設け諸問題について検討をするとともに、情報システムの活用に取り組み、その開発を試みた[1]。
死後できるだけ早く皮膚採取できるよう、インターネットの便利なところを活用し、その欠点を補い手間のかからないスムーズで正確な情報伝達システムを目指し開発した。

2. インターネットのSkin-Bankネットワークへの活用

 
8時間以内に皮膚採取を行なうために24時間体制で待機し、さらに効率のよい情報伝達網が必要になってくる。そこで、今後のInternetの普及を鑑み、WWW(World Wide Web)のホームページを活用し「皮膚採取のための連絡システム」を作成した。このシステムでは、皮膚提供の連絡をWWWのページからできるようにし、ここに必要事項を書き込むとスキンバンクのmailing listに電子メールが送られる。また、WWWのページからこの電子メールを見ることができ、一連の情報の流れが把握できるようにした。電子メールの受けとり時刻を正確にするためにxntpを動かし、stratum 1に時間を合わせるようにしている。
電子メールの不利なところは、常にインターネット端末を使用していないと電子メール到着に気づかない点である。そこで、このシステムではWWWから電子メールをおくると同時に、担当者に電子メールの到着をポケットベルにて知らせ、さらに、NTT DoCoMoのインフォネクストのサービスを利用し簡単な文字情報をポケットベルへ転送するようにした。さらに詳細な情報は、電子メールやWWWの電子掲示板にて確認する。

2.1 連絡システムの構成

a. WWWからの記入事項
1. 電子メールの表題
2. 連絡受付担当者の E-mail Address、氏名、所属教室、連絡用電話番号
3. 皮膚提供者の情報
氏名、年齢、性別、病名
死後経過時間、 白菊会会員か? その場合の会員番号
donorとして除外すべき疾患をもっているか?
TPHA+(1280倍以上)、HBs-Ag+、HCV-AB+、肝炎、肝硬変、肝癌、 ATLV+HIV(AIDS)+、白血病、リンフォーマ悪性腫瘍の皮膚転移、 感染症(ライ病を含む)
4. その他連絡事項
b. CGI(Common Gateway Interface)-BINによるMailの送付
入力項目に不備がないかをチェックし、必要項目が欠落しているときには、電子メール及びポケットベルへの情報送付はおこなわれずに、再度入力の警告がでる。
c. ポケットベルへの情報の送信
mailing listからの電子メール到着を知らせるためにポケットベルを鳴らすとともに、連絡先の電話番号とその他の連絡事項をポケットベルに送信する。これで電子メールを見なくてもある程度の情報は直ちに得られる。これはNTT DoCoMoのサービスを利用しており、北海道の場合pagercall@pagehokkaido.docomonet.or.jpへ 呼び出すポケットベルの電話番号と送信したい messageを書いたmailを送付することで実現できる。
d. MailからWWWの 掲示板 へ
スキンバンクのmailing listにて受けとったmailは
MHonArc(http://www.oac.uci.edu/indiv/ehood/mhonarc.html)を使いhtml(Hyper Text Markup Language)に変換して電子掲示板の形式で閲覧できるようにした。

2.2 啓発活動とインフォームドコンセント

皮膚採取に関して脳死の問題がなく、心臓が停止してからでよいということについて、一般の人々には意外と知られていない。また、ロシアからの熱傷患者の経験から、マスコミなどの報道により多数の皮膚提供者を獲得できたこともあり、多くの人々に熱傷の現状を理解してもらうことはスキンバンク成功の鍵となる。実際、解剖学教育のための献体の会である札幌医科大学白菊会総会にて、「熱傷治療の現状」について講演したところ、9人もの白菊会会員から死後の皮膚提供承諾の申し出があった(現在登録者は17名)。そこで、白菊会入会時に皮膚提供の承諾を得られるように準備を進めている。
さらに、インターネット上でスキンバンクのホームページを作成し、啓発活動の準備をしている。そこでは、皮膚採取の実際ということで、どの程度の皮膚を採取するかを写真画像により伝えられるようにした。これについては、スキンバンク設立準備委員会で検討後公開予定である。これからはインフォームドコンセントということで、皮膚採取の実態を知ってもらった上で皮膚提供を承諾してもらうことは重要である。実際に、この写真を見た何人かの人から感想を聞くと、皮膚採取という言葉だけだと深層の皮下脂肪まで剥されると錯覚しており、写真をみてこの程度なら皮膚提供に同意しても良いと感じたとのことであった。


3. 白菊会会員からの皮膚提供のシステム化

白菊会の会員情報や、献体から得られた解剖学情報、そして皮膚提供者の情を一括して管理できるシステムの構築を現在試みている。これらの情報についてはセキュリティーを守りながら、いろいろなアクセス制限を設けることを考えている。具体的には コンピュータのIP アドレスによるアクセス制限と、パスワードにより参照できる情報の制限を行なっている。Mailing listの電子掲示板のところはパスワードが必要なように設計してあり、その運用方法についてはこれからの検討課題である。


4. Medical Internet Exchange Project[2]活用計画(http://www.mdx.or.jp)

このSkin-Bankネットワークシステムは、札幌医大に閉じたものでなく、多くの人々の参加を得てセキュリティーを守りながら広く情報交換できるようにしたい。そのためにも 一般に対する啓発及び広報活動的な部分と、実際のSkin-Bankネットワークの運用面との2つの要素を合わせもつことが必要である。Skin-Bankの運用面においてアクセス制限やパスワードチェックだけだとセキュリティーの点で若干不安が残る。
そこでInternet Compatibleでありながらもある程度医療系に閉じた全国規模のネットワーク上で安全にかつスムーズに情報交換ができる実験として、Medical Internet Exchange Projectを立ち上げた。このプロジェクとでは、医療機関同士がお互いに接続することによって、医療情報のセキュアーな通信、医療情報の高速な通信、AUPに捕らわれない通信、共通のcacheを用いることによる効率化を目指す実験の場を作る。
全世界的にみても、インターネットの技術を活用した医療系に閉じたネットワークの構築はほとんどなく、日本では、唯一、北海道地域ネットワーク協議会の医療ネットワーク研究会[3]の議論から開始されたJPMEDというニュースグループ(http://www.sapmed.ac.jp/jpmed)がある[3,4]。これらのクローズドなNetNewsは、1996年の病原性大腸菌感染症流行のときには、有用な情報交換手段として役立った。これらの経験を元に、Medical Internet Exchangeを構築し、医療系に閉じた広域ネットワークの実験を開始したところである。このネットワークを皮膚移植の情報交換網として活用することを考えている。

5. まとめ

Skin-Bankネットワーク構築にあたって継続的な活動をコンスタントに続けるために、コスト面および人的資源の有効活用などを考える必要がある。そのためにも高度情報化システムとしてのインターネット活用は必須のものとなるが、さらに医療系特有の問題を解決するためにはまだまだいろいろな実験や研究を継続する必要がある。例えば、今回のポケットベルを鳴らすシステムは、電子メールを送るだけで良いのだが、同じ北海道内で情報交換するだけなのに、民間のこのサービスを利用するにあたって、一旦東京のNSPIXP(Network Service Provider Internet eXchange Point)経由の通信になってしまい、通信に時間がかかることがあり、緊急時の連絡網にどこまでつかえるか不安がのこる。そのためにも地域のIX(Internet eXchange Point)を真剣に考える必要があり、Skin-Bankネットワークなどにおける具体的な活用事例を念頭において、MDX Projectのなかでもその実験を押し進める必要があると考えている。

この研究は、一部 平成8,9年度 厚生科学研究健康政策調査研究事業及び日本学術振興会産学協力第163インターネット技術研究委員会(ITRC)の医療情報ネットワーク相互接続分科会による支援を得て行なわれた。

図表

図1、 SkinBank ホームページ


参考文献

1. 阿部 清秀、 辰巳 治之、村上 弦. 死体からの皮膚移植の生着率の評価及び、皮膚収集・提供システムのありかたに関する研究. 平成8年度 厚生省健康政策調査研究事業 総括研究報告書.
2. Nikkei Medical 1997年6月臨時増刊号 P20-21. 「医療専用の情報バイパス開発へ、より高速で安全な通信を目指す」
3. 大川洋平、辰巳治之. 医療ネットワーク研究会(SIGMED)のホームページ -- 医学系 インターネット情報サービス 一覧 --. 医学のあゆみ 179:417-423 (1996)
4. 大川洋平、山本隆一,水島洋、木内貴弘、辰巳治之、石川公一、内山 映子. 医学系ネットニュースグループ「JPMED」の一年のあゆみ 第16回医療情報学連合大会 論文集 490-491 (1996)

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