平成30年(2018年)5月より、当講座の教授とともに、附属病院精神科の科長に就任しております。
平成6年に広島大学医学部を卒業後、研修医として総合病院である大学病院で精神科の基礎を学ぶとともに、培養細胞や動物モデルによる精神薬理学の基礎研究のテクニックを学びました。その中で、臨床では、身体疾患を患う患者の精神心理的な負担の軽減の重要性に気づき、また、研究では、脳神経回路の特に大脳辺縁系と前頭葉の異常が気分障害の病態の一つである仮説に興味を持ち、ヒトの脳画像研究が今後の病態解明の鍵となると考え、国立がんセンター研究所支所(現在の国立がん研究センター東病院臨床開発センター)の精神腫瘍学研究部に異動しました。
そこで、がんと診断された患者の中にはその後、うつ病・適応障害となりその後のがん治療・日常生活に大きく支障をきたすだけでなく、死んだほうがまだましだと考える(自殺念慮)ほどの大きな苦痛・不安を抱える患者への支援の必要性を痛感しました。
その後、国立精神・神経医療研究センターの自殺予防総合対策センターに移り、我が国の自殺総合対策の方向性を決める自殺総合対策大綱の策定の過程やその対策の実際を経験するとともに、その中でも身体疾患を患う患者の自殺予防にかかわりました。同時に、精神薬理研究部に属して、抑うつ・不安の背景にある脳神経回路と基礎精神薬理学、そしてこれらの基礎研究の知見を基とした大規模臨床研究にも関わりました。
岡山大学に異動後は、学生、初期研修医、後期研修医(専攻医)の教育指導、地域・急性期精神科医療なども経験してきました。
これらの経験を活かし、大学としての「教育」「臨床」「研究」に貢献し、社会に求められている優秀な精神科医を育成し、安全で安心な医療の提供を目指していきます。
平成30年(2018年)5月14日、稲垣正俊
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