呼吸器・化学療法内科

概要及び対象疾患と診療内容


 当科は2004年に呼吸器専門内科としての歩みを開始したばかりですが、附属病院、医学部の皆様のおかげで、臨床検査、病理検査、治療機器が充実し、呼吸器疾患の全領域の診療が可能となりました。


呼吸器の病気の分類


 一つ目は呼吸器生活習慣病と呼ばれる、個人の生活習慣、なかでも喫煙習慣によって引き起こされる疾患です。主なものに、肺がん、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫)があげられます。一方、注目のメタボリック症候群や肥満によって引き起こされるものに睡眠時無呼吸症候群があります。

 二つ目はアレルギー性肺疾患と呼ばれ、生活環境中にその原因があることが多い病気で、気管支喘息、過敏性肺炎などがあげられます。

 三つ目は感染症で、気管支炎、肺炎、肺結核などがあげられます。

 四つ目は間質性肺疾患と呼ばれ、特発性(原因不明)、膠原病に合併するもの、薬剤性肺炎などがあげられます。

 五つ目は職業性肺疾患と呼ばれ、粉塵の吸入、石綿(アスベスト)の吸入によって生じるものがあります。

 六つ目は呼吸不全と呼ばれ、重症かつ高度の医療を必要とし、集中治療室での治療が必要となることもある呼吸器の緊急疾患です。

 七つ目は、咳が長期間続き、診断や治療に難渋することが多く、最近になって注目されてきている慢性咳嗽と呼ばれる疾患です。

 その他にも原因不明な稀な疾患も非常に多く、幅広い知識と経験が必要とされる分野と考えられます。
 呼吸器の病気と罹患年齢を図に示しました。喘息や睡眠時無呼吸症候群は中年に多く、肺がん、COPD(肺気腫)は高齢者に多くなります。

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呼吸器疾患の検査方法


1) 画像診断:胸部単純X線写真やCT、MRIを用いた検査を行います。
2) 呼吸機能検査:肺活量を含む、肺のさまざまな機能を調べ、診断や治療に役立てます。
3) 気管支鏡検査:肺に異常がある際に、組織を採取し、肺の細胞を調べ、診断を確定するための重要な検査(入院)です。
4) 睡眠時無呼吸検査:簡易モニター(自宅)と精密モニター(入院検査)があります。
5) 臨床検査として非侵襲的に行われる検査に、採血、検尿、痰を用いた検査があります。

呼吸器内科の特色


 島根県は高齢化が進んでおり、高齢者には呼吸器疾患の患者数が多いため、現在県内でも呼吸器内科は最も需要が多い科のひとつです。呼吸器内科ではメンバー全員での病棟回診や診断・治療方針の検討会を行い、患者さんにとって最良の医療を提供することを目標とした診療に取り組んでいます。専門外来としては、肺がんの外来化学療法、睡眠時無呼吸の在宅陽圧呼吸、慢性呼吸不全に対する宅酸素療法外来、禁煙外来を行っています。
 肺がんはいまだ難治がんの一つではありますが、新しい抗がん薬が次々と開発され、また、分子標的薬と呼ばれる、21世紀の治療薬も使用可能となり、ここ20年で非常に進歩しました。化学療法は患者さんの希望や病状に合わせてその時点で最良の治療を選択し、可能な限り通院治療を行います。
 睡眠時呼吸障害は、睡眠中に断続的に無呼吸を繰返し、その結果、日中傾眠などの種々の症状を呈する疾患です。70-80%の方は肥満、メタボリック症候群に合併します。いびきがひどく、家人から睡眠中に呼吸が停止していることを指摘されます。モニターを装着し外来(自宅)で検査後に精密検査のために短期間入院することで診断が可能です。治療方法は鼻にマスクをつけて機械で気道に圧力をかけて気道の閉塞が起こらないようにする在宅陽圧呼吸を行いますが、新しい機器が次々と開発され、非常に使い易くなっています。
 在宅酸素療法は体に足りない酸素を処方して、自宅で酸素吸入療法が可能な治療方法です。肺気腫、間質性肺炎、肺結核後遺症などが原因となりますが、風邪を引くと急に病状が悪化することがあるので、注意が必要です。
 専門性を保つため、現在、呼吸器学会指導医、呼吸器内視鏡学会指導医、アレルギー学会指導医、老年病学会指導医、日本臨床腫瘍学会指導医(暫定)、日本がん治療認定医機構指導医(暫定)、日本医学放射線学会専門医、日本禁煙学会専門医を揃え、それぞれの学会の認定施設となっております。

年間症例数等の実績


 平成18年、19年度の疾患別入院患者数をグラフにしました。平成19年度は238名の入院患者さんがあり、肺癌、肺炎、睡眠時無呼吸の順でした。

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患者さんへのメッセージ


 呼吸器内科を受診するきっかけとしては、検診の胸部レントゲンで異常陰影、咳や痰、喘鳴(ぜーぜー)、胸痛、息切れ、などがあります。とくに風邪ではない症状が長引く時は、早めに受診してください。また、タバコが止められない方には最新の薬物療法を用いた禁煙外来も行っています。タバコは多くの呼吸器疾患の原因ですので、ぜひ禁煙に取り組みましょう。


リンク


  日本呼吸器学会http://www.jrs.or.jp/home/
  日本呼吸器内視鏡学会 http://www.jsre.org/
  日本アレルギー学会http://www.jsaweb.jp/