呼吸器疾患
─気管支ぜんそくは適切な治療で日常生活ができるようになります。
気管支ぜんそくは吸入ステロイド薬を基本とした治療の普及により、良好な状態を維持することが可能になりました。一方、治療を十分に施しても発作を繰り返す難治性ぜんそく(重症ぜんそく)があり、患者さんの日常生活に大きな支障をきたします。近年は病態解明が進んで、難治性ぜんそくに効果が確認された抗体製剤ができ、従来の治療が十分に効かなかった症例に対して効果が期待できるようになりました。治療の目標は、「健康な人と変わらない生活を送る」ことです。症状や発作が起こる状態が当たり前と思っている方は、ぜひ最新の治療について検討してみませんか。
─間質性肺炎は高齢者を中心に増加しています。
間質性肺炎は肺の壁が硬くなる病気で、歩行など日常動作での息苦しさが主な症状です。発症のピークは70代で、高齢化に伴い増加傾向です。原因としては、ウイルス感染や膠原病由来のケース、一部の抗がん剤や漢方薬から来る薬剤性のものがあります。原因が不明な特発性間質性肺炎は、指定難病で、治療が難しい疾患でしたが、近年抗線維化薬を使用することで呼吸機能低下が抑制されることが分かりました。今年4月から診断基準と重症度分類が改定され、より多くの患者さんが医療費の助成を受けられるようになりました。
─近年増加傾向の非結核性抗酸菌症とはどんな病気ですか。
咳や痰、血痰や発熱、呼吸困難を起こす病気で、原因は自然界の土壌や水道水(浴槽、シャワー)などに広く存在する細菌を吸い込むことで感染します。結核の罹患数、死亡数が減少傾向にあるのとは逆に、非結核性抗酸菌症は罹患数、死亡数ともに増加傾向で、2014年に結核の罹患率を超えました。特に、中高年女性の発症が増えています。進行は緩やかであることが多い疾患ですが、治りにくく再発するため、多剤併用の薬物療法が必要です。近年は難治性の症例に有効な吸入薬が登場し、治療の幅が広がりました。「結核」と名が付くので、心配をされる方がいますが、この病気は人同士の感染はありません。
─これらの病気の啓発のため、若手医師の育成や講演会を行っています。
当科は「呼吸器診療の基盤を整え、健康増進へ寄与する」ことを使命に、患者さんと日々向き合い、治療に取り組んでいます。しかし、県内全体では、呼吸器疾患を診ることができる医師やスタッフは足りておらず、全てに適切な医療を届けることができていません。また、予防、早期発見のため、呼吸器専門医だけではなく非専門医との連携、患者さん自身の理解が大切です。今後、若手医師、メディカルスタッフの教育に必要な勉強会や研修を実施するとともに、ホームページで呼吸器疾患の理解が深まるコンテンツを提供していきます。また、市民公開講座で、呼吸器疾患の啓発活動を進めます。末永く健康に暮らせる未来のため、ぜひご支援をお願い致します!
“人”を診る科
当院で呼吸器疾患を扱う診療科は呼吸器・化学療法内科です。名前からは、悪性腫瘍を中心に診療していると思われがちですが、あらゆる呼吸器疾患に対して広く、深く対応しております。病気のみではなく“人”を診る、そのような観点から、地域の皆様とともに活動できるように“人生会議”を含めた緩和ケアの充実にも力を入れています。是非とも“地域をまもる診療”を実践している当院の呼吸器・化学療法内科のご支援をよろしくお願いいたします。
島根大学医学部附属病院
病院長 椎名 浩昭