眼科学セミナー

2019年4月15日、The University of Tennessee Health Science Center, Department of Ophthalmologyより、 Nawajes Mandal先生、Oklahoma Center for Neuroscience, University of Oklahoma Health Sciences Centerより、Michael H. Elliott先生が、 ご講演にいらっしゃいました。
お二人は谷戸先生の留学先での研究仲間であり、現在でも親しい友人であるとのことで、 現在も眼の基礎研究に関して様々な論文を発表されている先生方とあって、かなり内容の濃い講演をお聴きすることができました。
Mandel先生のメインテーマはSphingolipidsに関するもので、様々な網膜症の中でも糖尿病網膜症をメインターゲットとして研究をしておられるようでした。 Sphingolipidsは神経変性と血管新生に関与しているということを見出し、実際、糖尿病網膜症患者の硝子体中のSphingolipidsの組成を計測し、 高血糖状態の持続によって、細胞死・生存に重要な役割を果たすCeramideが減少し、Lactosyl Ceramideが増加するという現象を確認し、 そのカスケードにおける酵素の発現を調整することで糖尿病網膜症の新規治療法を開発しようという挑戦的な試みを大変分かりやすく説明してくださいました。
一方、Elliott先生は、Caveolin-1(CAV-1)/caveolaeを中心に据え、緑内障(原発開放隅角緑内障)をメインターゲットとして研究をしておられるようでした。 CAV-1は機械的情報変換(mechanotransduction)に関与し、緑内障をはじめ、AMD、糖尿病網膜症、 ブドウ膜炎といった様々な眼疾患に関係する重要な因子であるそうで、実際、CAV-1が低下すると、平滑筋細胞の収縮が低下し、血管の緊張が減少し、 その結果、血管の蛇行を確認することができるとのことでした。また、CAV-1をKOすると、房水の流出が阻害され、 眼圧が上昇、シュレム氏管、線維柱帯においてcaveolaeの局在が確認でき、さらに、caveolaeはシュレム氏管を眼圧による障害から保護し、 eNOS inhibitor (L-NAME)を用いた検討では、Cav-1−/−群において、Control群と比較して、有意にNOS阻害の影響により、眼圧依存性の房水排出機能が低下したとのことでした。
正直な話、内容が豊富かつ、非常に難解で、ついていくのがやっとでした。いずれの発表も初めて拝聴する内容のものでしたが、 お二方とも病態に関係しそうなある因子・物質に着目し、疫学、病態解明から治療へと結びつけようとする一本筋の通った研究をされておられ、大変感銘を受けました。

松尾将人 


Nawajes Mandal先生            Michael H. Elliott先生
      
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