公開講座名 |
医療的ケアが必要な子どもを介護する家族と支援者の研修会 主たるテーマ「QOLの向上を目指した子どもの管理」 |
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実施責任者 | 矢 田 昭 子 (看護学科臨床看護学・講師) | |||||||||||
実施協力者 | ||||||||||||
実 施 内 容 | ||||||||||||
日時:平成20年2月29日 13:30-15:45 1)研修会のねらい 平成18年度は「市民の生涯学習教育を支援するための公開講座」の助成を受け、医療的ケアが必要な子どもを在宅で介護している家族や支援者に対して、急変しやすく生命に影響を及ぼしやすい呼吸管理や胃ろうの管理、肺理学療法について2回の研修会を開催した。その結果、参加者からはあいまいな知識や技術のまま介護やケアを行っていたが、正しい知識や技術を学ぶことができてよかったという意見が多く見られた。しかし、1回の研修会では十分に知識や技術を習得することが難しいという意見もあった。 そこで、平成19年度は継続し、QOLの向上を目指した医療的ケアが必要な子どもの管理ができるように、家族や支援者へ知識や技術の向上を図ることを目的に「急変時の対応と予防」について講義と実技の研修会を開催した。 2)事前準備 医療的ケアが必要な子どもときょうだい、親が安全に安心して参加できるように下記のようにボランティアを確保した。 @きょうだいは子育てサポートに登録している市民のボランティアを4名依頼した。 A医療的ケアの子どもは家族が講義や演習に参加しやすいように、看護師免許があり小児看護に精通しているボランティアを3名、看護師免許のある学生3名、小児看護学実習が終了した学生1名、合計7名依頼した。 B医療的ケアが必要な子どもと一緒に参加の場合は各自が吸引器など必要な物品を持参してもらうように家族へアナウンスした。 3)研修会 (1)参加者44名(松江市や大田市からの参加もあった。) 【医療的ケアが必要な子どもと家族】 @医療的ケアがある子ども8名 Aきょうだい4名 B父親2名、母親10名、伯母1名 【支援者】 @養護学校教員9名 A学校看護師 3名 B保健師 3名 Cヘルパー 2名 D病院看護師 2名 (2)基調講演 @テーマ:「医療的ケアが必要な子どものちょっとおかしいと思った時から急変した時までの対応と予防」 A講師 島根大学医学部附属病院 竹谷 健 氏 (3)救急蘇生の実技トレーニング @講師:島根県重症心身障害児(者)を守る会副会長 太田市消防署救急救命士 原田 孝 氏 A方法 ・講師は救急蘇生術を心肺蘇生法の実習で使う人形「レサシ」を用い実施した。 ・講師の指導を受けながら、心肺蘇生法の実習で使う人形「レサシ」を用いて、家族や養護学校教員、ヘルパーなどが心肺蘇生術を実施した。
(4)研修会中の医療的ケアが必要な子どもの託児について 家族が講義や実技トレーニングを安心して受けることができるように、会場の実習室内で子ども1名に対しボランティア1〜2名で吸引や全身観察、遊びなどを行った。研修会中に1名の子どもが泣き入り引きつけを起こし、顔色不良になったが自然回復した。 (5)研修会内容のビデオやDVD作成 都合で参加できなかった家族・支援者や、救急蘇生術の技術トレーニングを家庭で何時でも何処でもできるように、VHSビデオやDVDを作成するために、参加者に了解を得て専門の業者による撮影を行った。今後はできあがったVHSビデオやDVDを希望者に回覧していく予定である。 4)参加者のアンケート結果 有効回答は27名、回収率は61%であった。 (1)対象の背景 対象者は家族10名、養護学校教員9名、学校看護師3名、保健師2名、ヘルパー1名、その他1名であった。 (2)研修会の満足度 研修会の満足度では「大変良かった」が21名(78%)、「まあまあ良かった」が6名(22%)で内訳は家族2名、養護学校教員3名、保健所保健師1名であった(図1)。
(3)研修会の満足度の理由 @家族 ・新しい情報を得ることができた。 ・心肺蘇生法をアットホームな雰囲気で実際に行うことでよかった。 ・一番気になっている内容でよかった。 A支援者 ・救急蘇生の実技があってよかった。 ・毎年救急蘇生の研修会を受けるがいざという時に対応できるか不安である。実技をすることができてよかった。 (4)困っていること @家族 ・医療的ケアを一人でやるので負担が大きい。 ・身体の変形が進み、よく熱がでて困っている。 ・体重が増えて介護負担が大きい。 ・睡眠のリズムの崩れ。 ・経済的な問題がある。 A支援者 ・排痰方法や呼吸ケアを学ぶ機会がない。(養護学校教員) ・夜眠れない子どもの対応。(養護学校教員) ・東部と西部で支援内容の相違があること。(養護学校教員) (5)今後の研修会の要望 @家族 ・今回のような「急変時の対応と予防」研修(定期的に開催) ・吸引方法や経管栄養法 ・側彎の予防方法 ・リハビリ(肺理学、嚥下、四肢など) A支援者 ・今回のような「急変時の対応と予防」の開催(定期的に開催) (学校看護師、養護学校教員) ・医療的ケアのある子どもの健康面の配慮(養護学校教員) (6)その他 ・託児があり、家族が安心して参加できてよかった。 ・対象者がたくさんいるので、たくさんの家族が参加してもらえるようにしてほしい。 6.総括 今回、医療的ケアが必要な子どもをもつ家族と支援者を対象に昨年度に引きつづき3回目の研修会を開催した。今回は家族が安心して学習できるように、きょうだいや医療的ケアが必要な子どもを託児できるようにボランティアを手配し、開催した。その結果、講義と実技があり、家族、支援者ともに参加者全員が満足していた。家族は講義で新しい情報の収集や、行っている医療的ケアや子育てについて振りかえる機会にしていた。また、救急救命士による救急蘇生法の実技では我が子のために真剣に取り組んでいる様子が見られた。一方、支援者も新たな知見の習得や救急蘇生法の実技をすることでスキルの向上につながった。 今後は医療的ケアのある子どもときょうだいの託児ができる体制を整えながら、家族、支援者共に医療的ケアが必要な子どもを安全で安心な管理ができ、子どもと家族のQOLが向上できるような実践的な研修会を定期的に開催する必要性が示唆された。
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