挨拶

島根大学医学部附属病院 病院長  井川 幹夫

 コンピューター断層撮影装置(CT)などを使って、解剖することなく死因を明らかにする死亡時画像診断(Autopsy imaging、以下Ai)を実施する施設が増加していますが、当院においても2011年6月の新病棟オープン時から、Aiセンターが稼働を開始しています。
当院入院中または救急外来受診時にお亡くなりになったすべての患者さんの死因の最終確認および診断の透明性、中立性を確保するため、24時間体制で専用CT(16列MDCT)によるAiを実施しています。撮影時間は2分程度で全体でも20分以内です。当院で亡くなられた患者さんについては、費用はすべて病院で負担します。ご遺族の希望があれば画像を電子媒体(DVD等:有償)でお渡しします。Aiの結果で病理解剖が必要になる場合もありますので、ご遺族の皆様にはご理解・ご協力いただきますようよろしくお願いします。
  当院のAiセンターは、他の医療施設から撮影依頼のあったご遺体、司法機関から依頼された法医検査ご遺体と医学部の解剖実習にご献体されたご遺体も撮影対象としています。法医検査ご遺体のAiについては、明らかな病死以外の異状死体数が増加傾向にありますので、法医解剖の負担軽減のため今後実施の頻度が高くなることが見込まれます。また医学部の解剖実習では、医学生はご献体のCT画像を参照しながら、人体の三次元的理解を深めることができますので、臨床において画像診断能力が飛躍的に向上することが期待されます。
 昨年(2011年)の6月から年度末(2012年3月末)までにAiは総計243件行われ、大半は入院中に亡くなられた患者さんに実施されています。今後、蓄積されたデータの解析を行い、医療安全、診療の透明性確保の推進に活用します。このような趣旨をご理解頂き、Aiにご協力のほどよろしくお願いいたします。

 

島根大学医学部附属病院 Aiセンター長   竹下 治男

 Autopsy imaging(Ai死亡時画像診断)センターが2011年6月27日よりスタートいたしました。厚生労働省による「死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会」の開催や、日本放射線学会の認定医制度など、Aiを社会制度として取り入れる動きが活発化している中、地域医療における死因究明の中核的役割を期待して、全国に先駆けて設置稼動しました。
 法医学では、解剖鑑定数の増加にどこまで対応しきれるのかという懸念を抱きつつ、日々の実務をこなしているのが現状であります。しかし浜田女子大生殺人事件等凶悪犯罪の撲滅は一地方県においても喫緊の課題です。さらに島根県は独居高齢者が多く、県面積が広いために遺体の発見遅延からの死因不明や異状死体等が多いことから司法解剖率が高く、負担軽減や補助診断のために死後画像診断の導入は不可欠なものとなってきています。
 また、東日本大震災では宮城県や福島県での被災地における死体検案支援事業に参加し、100体以上の死体検案を行ってまいりましたが、このような大災害時においても将来的展望として、Aiを活用した個人識別や死因診断の可能性も感じられました。
 これらの実現にはハードルがあり、1つ1つクリアしていくものと思われます。Aiをめぐる問題点としてCTの使用、診療時間と実施時間の調整、コスト負担等まだ解決されておりませんが、立ち上げの現段階では、日常業務多忙の臨床各科には負担をかけることはできないと思われ、まずは我々法医学者からできること、しなければならないことを考え運営していければと思います。
 死因究明率向上、犯罪捜査への協力のみならず、医療不信の回避、さらには医学の根幹をなす医学研究への貢献のためにと思います。各センターにご理解ご協力いただき、死因不明社会の一掃や精度の高い死因究明の方向から先進的な社会地域貢献を行っていく所存でございますので今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。