Japan Pediatric Society for Oriental
会頭 八木 実 鶴岡市病院事業管理者/久留米大学名誉教授
皆さん、こんにちは。鶴岡市立荘内病院小児外科・漢方内科の八木 実です。この度、2025年11月2日(日)に、山形県鶴岡市の東京第一ホテル鶴岡において、第52回日本小児東洋医学会学術集会を開催することになりました。皆様方にこの場を借りて御挨拶させていただきます。外科出身の会頭による本学会開催は初めてであり、山形県での開催も初めてです。4年前まで在職しておりました福岡県久留米市での開催も考えましたが、普段訪れる機会の少ない土地の方が興味を持ってお越しいただけるかなということで、山形県鶴岡市で開催することにしました。
鶴岡市は新潟県北部に隣接し山形県西部、庄内平野の南部に位置し、江戸時代以来、東北一の米どころ庄内藩にあって、藩主の徳川四天王である酒井氏が鶴ヶ岡城を築いた庄内の中心地です。山形県の海側のエリアを庄内と呼びます。2014年12月には、ユネスコの「創造都市ネットワーク」のひとつ、食文化部門に、日本で初めて加盟が承認された食の都でもあります。同部門には、四川料理の中心地・成都や、イタリア・パルマ、タイ・プーケットなどの18都市が認定を受けています。鶴岡市の食のキーワードは、4つ。1つ目は、信仰のなかから生まれた食文化。羽黒山、月山、湯殿山からなる出羽三山は、古来、山伏が駆ける修験道の地で、庄内には、自然と人間の深い関わりから育まれた食文化が息づいています。山伏たちは、山にある山菜やキノコなどを調理・保存しながら健康を保ち、修行を続けていました。その山伏の修行の食事をルーツに育まれたのが、出羽三山に伝わる精進料理です。修行を終えた山伏には町に戻る者もあり、山伏の料理は、町衆や農民にも少しずつ浸透していきました。2つ目は、庄内藩主、酒井氏のもとで育まれた「農」への敬意。そして3つ目は、国の重要無形民俗文化財にも指定されている「黒川能」に代表される行事食・郷土料理が継承されていることです。そして4つ目は、50種類以上が継承されているといわれる庄内固有の在来作物の存在です。また、米どころの庄内は、美味しい酒どころでもあります。是非ご賞味ください。
文学的側面から見ると鶴岡市は時代小説家藤沢周平の故郷。鶴岡市内の荘内神社敷地内に藤沢周平記念館があり、彼の作品を深く味わう拠点です。館内には数多くの作品を執筆した自宅書斎を移築・再現されています。自筆原稿や創作資料などを展示し、藤沢周平の作品世界と生涯を紹介しています。著作本や関連する郷土資料を読むことができるサロンでは、貴重なインタビュー映像などを視聴することもできます。鶴岡の情緒豊かな佇まいは、藤沢小説に頻繁に登場する海坂藩の舞台になっています。街並みや風景・風土、郷土料理までもが、まさに鶴岡そのものなのです。さらに、随筆や寄稿文に彼独自の美学と一抹の気恥ずかしさをもって語られる郷土賛美。一度でも生まれた土地を離れた者にとって、故郷はルーツであり、あこがれでもあるといわれますが、彼の筆が語る昇華された故郷への思いは、控えめながらも故郷・鶴岡の美しい風景、風土への自信に満ちあふれています。
庄内で最も有名なフォトジェニックスポットといえば鶴岡市立加茂水族館の「クラゲドリームシアター」。直径5mの巨大な水槽に、約1万匹ものミズクラゲがプカプカと浮いています。人気のため繁忙期は写真撮影ができないこともありますが、今回の学会の翌日は代休日ですので是非お越しください。
東京から庄内へのアクセスは、飛行機(ANA、羽田庄内便は1日5往復。)や特急列車などいくつかの方法があります。移動中も楽しみたい方は、観光列車「海里(かいり)」がおすすめ!全席指定で、金土休日を中心に運転しています。まず東京から上越新幹線で新潟へ。新潟から庄内へ走る海里で、車窓から見える日本海や田園風景の美景を楽しんでください。
肝腎の今回のメインテーマは「出羽三山のふもとで考える小児漢方の新たな可能性」です。私は外科医になって6年目に漢方と出会いました。それまで、外科医として病気は手術で治すものと、ひたすら手術手技の向上に努めておりました。漢方は特別な学問で外科とは、かけ離れたものと考えていました。しかし、消化器外科医だった頃、外科関連の漢方の講演会で、外科手術後の回復に補剤が有用だったり、手術後の腸閉塞や排便機能障害、黄疸遷延などに漢方が有用であることを学ばせていただき考え方が変わりました。小児外科医専従になった37歳頃より実際には、小児消化器疾患、肝胆道疾患、悪性腫瘍、リンパ管腫、肛門周囲膿瘍、など幅広いエリアに応用しそれらの有用性を実感し、ご家族からも喜んでいただきました。
私も学会を通して、漢方を愛するたくさんの先生方と出会いました。内科、外科、小児外科、小児科、麻酔科はもちろん、他科の先生との交流も広がりました。本学術集会でも、たくさんの輪を広げていきたいと思っています。当日は一般演題、ランチョンセミナー、スポンサードセミナーを予定しております。本学術集会で、熱く議論し、多くのことを学んでいただき未来ある子ども達の診療に役立てていただけたら幸いです。
是非、2025年11月、鶴岡にお越しください。お待ちしています!