島根大学医学部付属病院Vascular Labは、2014年10月より島根県内のオスラー病の診療実態調査、本疾患の早期発見と関連診療科の連携体制の構築を目的に活動を開始し、2015年2月には「遺伝性血管疾患とVascular Lab、オスラー病を知る」と題し、大阪市立総合医療センター小宮山雅樹先生をお招きして講演会を開催しました。

難治性鼻出血、末梢血管拡張症、内臓血管奇形を来す常染色体優性遺伝性疾患オスラー病の有病率は 1／5000〜8000人 とされており、島根県の患者数は87〜139名（平成27年6月現在）と推定されますが、昨年我々が行った県内主要医療機関へのアンケート調査では現在県内で治療中の患者は皆無に近く、多くの患者が未診断であるのが現状です。

オスラー病は、表1のCuracao診断基準により臨床診断が可能です。主にTGFβの受容体Endoglin（END）、ALK1（ACVRL1）の遺伝子変異が原因となり、加齢に伴い鼻出血、末梢血管拡張、内臓病変（脳，肺，胃腸，肝動静脈奇形）の血管病変が出現・重症化し多彩な病型を呈するため、初発症状として小児期に多く見られる鼻出血単独で診断に至ることはまれです。そのため、若年時に脳出血や脳梗塞・脳膿瘍（肺シャントのため）等の重篤な合併症を併発して初めて診断されるケースも少なくなく、早期診断と早期治療介入の取り組みが急務です。一方、難治性出血性病変による高度貧血例や肺動脈性肺高血圧症、高心拍出性心不全、肝性脳症を来す重症病型もあり病態の解明と有効な治療法の開発が望まれます。

本疾患診療には、多くの血管病変の治療に当たる関連診療科連携、患者が抱える他疾患治療にあたる診療科との連携、そして長期の経過に対応し患者の療養を支援することを目的とした疾患センターの創設が望まれます。また、遺伝性疾患であることから生じる患者・家族の悩み・問題にも対応できるよう、遺伝相談やリエゾンサービスも重要です。本疾患は2015年7月より厚労省指定難病に認定され、診療に対する経済的、行政的支援が行われるようになりました。Vascular Labでは、本疾患の検査や治療のみならず、患者が抱えるさまざまな課題の解決の窓口としても対応していきたいと考えています。

オスラー病の情報はこちら（難病情報センター）をご参照ください。

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