島根大学医学部整形外科学教室
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教授室より
平成20年 年頭所感
島根大学医学部整形外科学
教授 内尾祐司
新年、明けましておめでとうございます。

平成20年の新春を迎え、皆様にお慶びを申し上げますとともに、年頭に当たりご挨拶申し上げます。

2002年に当教室を担当させて頂くことになってから早5年が経ち、今年6年目になります。こどもでいえばやっと小学校に入学する年ではございますが、この5年間、充分なことができたとはいえず、内心忸怩たる思いがございます。そのような中、皆様のご支援をもちまして、新しい年を迎えることができましたことに改めまして感謝申し上げる次第でございます。

さて、昨年は日本各地で医療崩壊が明るみに出た年でした。多くの医療事故・訴訟や勤務医不足、病院の閉鎖・倒産、救急医療のたらい回し報道など、10年前には予想だにしなかった医療崩壊が国民の生活に目に見える形となってきました。医療現場においては過重労働やリスクマネージメントに対する精神的な負荷など、医療従事者は身も心もすり減らしながら医療業務に従事しています。

このような臨床現場からの医師の退職・離職を、一部のメディアや評論家は“エクソダス(脱出)”と称しています。エクソダスとは元来、モーセがエジプトを脱出するときの出エジプト記で使われた言葉です。モーセはエクソダスによって約束の地カナンに向かいましたが、果たして医療は何処へ向かおうとしているのでしょうか。

この医療崩壊には直接的には医療費抑制政策や新臨床研修制度が関与していることには論を待たないものと思います。そして、医療現場での少ない医師による過重労働は医療従事者を医療事故・訴訟回避のための保身医療に向かわせています。それが限界に達したとき、この状況からの退避“医療現場からのエクソダス”が起こっているのだと思います。すでに医療費抑制政策がもたらした医療の崩壊の“先進国”である英国の状況を鑑みれば、ひとたび医療従事者のモチベーションが落ちてしまえば、その国の医療水準の回復には長い時間と多額の経済的負担が必要なことは明白です。

このような危機的現況を克服するためには、医療従事者の頑張りももはや限界であることも事実です。しかし、私達が現状の困難さをただただ託ち、モチベーションを下げて、現状の問題を自分の“エクソダス”の言い訳にしてはならないはずです。このような時こそ、医師としての知識を深め、技術・技能を高め、医師としてしっかり地に着いた勉強をしていかねばならないと考えます。そうすれば、どのような世になっても、基軸のぶれない立派な医師としての人生を全うできると思うのです。

昨年、整形外科医をめざす新しい3名の先生が教室に入ってくれました。人的にも経済的にも決して恵まれている教室とは言えませんが、人こそが教室の宝と考えます。この人達を含めて教室にいる若い人に、「これから何をどう伝え、育てていくか」を考え、行動していくことが教室を預かるものとしての私の責務であると考えます。

繰り返しになりますが、当教室の使命の一つは、人間性が豊かで思いやりがあり、人類の福祉に貢献できるような医学・医療を拓くことのできる医療人を育成することにあります。

2007年は「偽」の年でした。「真」の医師となるために私達がしなければならないこと、それは現状を憂えたりする前に、医師としてやるべきこと、やらなければならないことを確実にすることであると思います。なにごとも一足飛びには成り得ません。日々の診療・研究の中で少しずつ地道な努力を積み重ねてこそ、「真」の医師に到達できるのだと思います。医師を志して医学部に入学した頃の初心をいつまでも忘れないで日々精進して行かなければなりません。

本年も決して楽観できる年ではないと思いますが、教室員の心を一にすればこの難局は乗り越えることができるものと信じています。

「心だに まことの道にかなひなば 祈らずとても 神や守らむ」   (菅原道真)

最後に、今年が皆様にとりまして、希望と幸せが満ちあふれる年となりますように、心より祈りまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。

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