日本癌学会機関誌「Cancer Science」に微生物学講座Sintayehu Fekadu Kebedeさんの研究論文が掲載されました(2021.8.27)

公開日 2021年09月17日

【論文タイトル】

Gastric epithelial attachment of Helicobacter pylori induces EphA2 and NMHC-IIA receptors for Epstein-Barr virus
ピロリ菌は胃上皮細胞に接着し、エプスタインバーウイルスの低親和性感染レセプターEphA2とNMHC-IIAの発現を誘導する
Cancer Science 2021 Aug 27. doi: 10.1111/cas.15121. Online ahead of print.

 

【概要】
 エプスタインバーウイルス(EBV)関連胃癌は、胃癌の4種類のサブタイプ分類の1つであり、全胃癌症例の10%を占めます。しかし、胃がん患者のほとんどは、ヘリコバクター・ピロリ菌感染の既往を持っています。そこで、ピロリ菌感染がEBV関連胃癌の発症を促進する可能性について検討しました。
 実験はEBVの主要受容体であるCD21を発現しない3種類の胃上皮細胞を用いました。まず、胃上皮細胞にピロリ菌を7時間接触させ、次に、緑色蛍光タンパク質を発現する組換えEBVを感染させました。EBV感染細胞を、緑色蛍光タンパク質発現細胞として、フローサイトメトリーを用いて測定しました。実験の結果、ピロリ菌接触は胃上皮細胞のEBV感染効率を高めました。CagA欠損菌やVacA欠損菌の接触によっても感染効率が増加しました。FlaA欠損菌は、そのままだと運動性がなく細胞と接触できませんが、遠心力を用いて細胞に接着させると感染効率が増加しました。一方、cag病原遺伝子群全体の欠損菌を接触させると、感染効率は増加しませんでした。ピロリ菌のIV型分泌装置を介した病原因子の伝達が重要と思われました。ピロリ菌接触は、胃上皮細胞にEBVの副受容体であるEphA2とNMHC-IIAの発現を誘導し、それらの発現レベルに応じてEBVの感染効率が高くなりました。EphA2遺伝子またはNMHC-IIA遺伝子に対するsiRNAで処理した胃上皮細胞にピロリ菌を接触させると、EBV感染効率が低下しました。
 ピロリ菌の接触付着は胃上皮細胞におけるEBVの副受容体の発現を誘導し、発癌ウイルスであるEBVの感染効率を高めることがわかりました。

 

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◆本件の連絡先

島根大学医学部微生物学講座

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