公開日 2021年05月26日
うつ病や統合失調症をはじめとする精神疾患は約5人に1人が生涯に一度は罹患する疾患で、発症してしまうと治療には長い期間がかかり、その社会的損失は年間数兆円におよぶと言われています。精神疾患は適切な診断、早期の介入が重要であると考えられており、早期に専門的支援や適切な治療が受けられれば、予後がよくなることが報告されています。精神疾患は精神病発症リスクが高い状態である精神疾患発症危険状態(At Risk Mental State; ARMS)を経由して発症すると考えられていることから、精神科医療においてARMS診断は非常に重要です。しかしながら、ARMSの診断は専門の精神科医でなければ難しいため、客観的なARMSを把握できる検査薬の開発が切望されていました。
今回、島根大学人間科学部 和氣玲准教授(医学部精神医学講座兼任)、島根大学医学部 宮岡剛臨床教授(松江青葉病院副院長兼任)、島根大学医学部免疫精神神経学共同研究講座 大西新特任教授((株)RESVO CEO&CTO兼任)らを中心とする研究グループはARMS患者と健常者の尿成分を比較検討したところ、ARMS患者においてストレスによって変化する2つの成分が増減していることを発見しました。この発見はARMS検査薬の開発に新たな道を開くものであり、本研究成果は2021年5月9日精神医学専門誌「Early Intervention in Psychiatry」で発表されました。
本研究は2018年から始まった島根大学医学部と精神疾患研究に特化したバイオベンチャーである(株)RESVOによる産学連携によってなされました。現在、世界で唯一のバイオピリン測定キットの開発を進めているセルスペクト(株)のキットを活用し、(株)RESVOと予防医療検査サービスのパイオニアである(株)プリメディカによって全く新しいメンタルストレス検査サービス事業の開発が進められています。近年、コロナの蔓延による在宅勤務等で社会的にストレスが増大しています。ストレスは精神疾患の引き金になるだけでなく、様々な身体的な疾患も引き起こすと考えられており、ストレス管理は重要な社会課題となっています。当該検査サービスの速やかな普及拡大がこの課題解決に貢献するのではないかと期待されます。
株式会社RESVO(http://resvo-inc.com/)
精神神経疾患の治療薬及び検査薬を研究開発するバイオベンチャー。2018年から島根大医学部精神医学講座と共同で免疫精神神経学共同研究講座を設置し、未だ治療法が確立していない精神疾患の病態解明及び治療法開発を行っている。
株式会社プリメディカ(https://www.premedica.co.jp/)
予防医療分野で国内最大級の検査実績を誇る企業であり、脳梗塞・心筋梗塞発症リスク検査であるLOX-index🄬(ロックス・インデックス)をはじめ、様々な疾患リスク検査の事業化に成功している。
セルスペクト株式会社(https://www.cellspect.com/)
疾患分子センシング技術による体外診断薬の開発メーカー。心理ストレスマーカーバイオピリンの臨床研究製品の提供に注力している。新型コロナウイルス感染症検査アイテムの国産開発・実用化に成功しており、受賞多数。
掲載論文タイトル
Wake R, Araki T, Fukushima M, Matsuda H, Inagaki T, Hayashida M, Hashioka S, Horiguchi J, Inagaki M, Miyaoka T, Oh-Nishi A.
Urinary biopyrrins and free immunoglobin light chains are biomarker candidates for screening at-risk mental state in adolescents.
Early Interv Psychiatry. 2021 May 9. doi: 10.1111/eip.13154. Online ahead of print.
URL https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/eip.13154
◆本件の連絡先
島根大学人間科学部 准教授 和氣 玲(わけ れい)
電話:0853-20-2262 Fax:0853-20-2260
島根大学医学部 免疫精神神経学共同研究講座 特任教授 大西 新 (おおにし あらた)
電話:0853-20-2262 Fax:0853-20-2260
e-mail:information@resvo-inc.com