公開日 2022年02月25日
内科学講座内科学第一の国内留学生(研究員)、熊谷麻子先生(現 順天堂大学所属)の演題が2022年2月20日開催の第11回 CKD Frontier meeting(2022年2月20日開催)にて、CKD Frontier Awardを受賞しました。
【演題名】
Dietary magnesium insufficiency induces salt-sensitive hypertension in mice associated with reduced kidney COMT activity
【概要】
Catechol-o-methyltransferase (COMT)は生体内catechol代謝に必須のマグネシウム(Mg)依存性酵素です。Estradiolの中間代謝産物17-β-hydroxyestradiol(2-OHE2)はCOMTの基質であり、多彩な臓器保護効果が証明されている2-methoxyestradiol (2-ME)に代謝されますが、我々は重症妊娠高血圧腎症症例では胎盤COMT蛋白・血中2-ME濃度が共に抑制されていることを報告し、妊娠COMT不全マウスは、2-ME欠乏に基づいた胎盤形成異常・血管恒常性破綻・炎症惹起を介して妊娠高血圧腎症様症状を呈することを見出しました。
妊娠高血圧腎症ではMg欠乏の頻度が高く、また妊娠高血圧腎症と塩分感受性高血圧との関連も知られています。今回の解析では遺伝的にCOMT活性が低い系統のマウスがMg欠乏に感受性を示してさらなるCOMT活性低下の結果、尿細管におけるNaCl再吸収機構を活性化させ塩分感受性高血圧を呈する事、2-MEによる介入がそれを抑制することを示しました。またメスマウスでは卵巣摘出時のみ、同様の表現系を示しました。
ヒトCOMT遺伝子にはmRNAや蛋白の安定性を制御しCOMT酵素活性に寄与する数々なSNPやhaplotypeが報告されていますが、我々の発表以後それらのCOMT不全に関連する遺伝素因と妊娠高血圧腎症の相関が各国から報告されました。また、COMT活性低下遺伝子多型と肥満、糖尿病、高血圧、癌、CKDとの相関も性別を問わず、次々に報告されてきておりますので、今回のMg欠乏とCOMT遺伝素因に関する発見は遺伝素因と環境素因の相互作用といった観点で重要なものであると考えられます。
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◆本件の連絡先
島根大学医学部内科学第一 教授 金﨑 啓造
E-mail:kkanasak@med.shimane-u.ac.jp