公開日 2023年11月29日
11月13日(月)、デンマーク王立病院肝胆膵外科・移植外科の福森大介先生をお迎えして、『デンマークにおける外科医教育・日本人の海外留学・ロボット手術について』と題し、ご講演いただきました。福森先生は、福岡大学ご出身で北海道大学第1外科・福岡大学消化器外科を経て、 現在、デンマーク王立病院で肝胆膵・肝移植をメインに執刀され、ロボット肝切除の責任者を務めておられます。そうした多彩なご経験を基に、デンマークの医療、執刀してきた手術、世界に出て学ぶ意義などについて熱く語ってくださいました。
まずはデンマークの医療についてご説明いただきましたが、日本の医療と比べてあまりにも違う点ばかりで驚きの連続でした。特徴的な点は、1)医療費は全員が無料であること、2)行くことのできる病院が指定されること、3)社会保障番号が全国民に割り振られ、電子カルテシステムが全病院で統一されていることです。北欧は福祉面のサポートが手厚いと聞いたことはありましたが、ここまでシステムが整備されているとは思いませんでした。ただ、こうしたシステムを支えるために、多額の税金が国民から徴収され(多い時には所得税が6割に達することも)、2)のようにどの病院でも通院できるわけではないといった背景もあるようです。
(セミナーの様子)
そんなデンマークで福森先生が取り組んできた大きな仕事の一つがロボット手術の導入、普及です。2019年にロボット手術の技法がデンマークで福森先生を中心に導入されると、ロボット手術による執刀数はみるみる増え、今では多くの肝切除をロボット支援下で行っているそうです。執刀時の実際の映像を交えながらお話しいただき、ロボットを用いるからこそなしえる手術の繊細さ、効率の良さを見せていただきました。こうした豊富なご経験から様々な面でロボット手術が秀でていることを、世界に向けて発信されています。
最後に、医学生や若手医師に向けて、福森先生のご経験をもとに日本から世界に出て臨床を学ぶ意義についてお話しいただきました。福森先生は医師になられてからも、患者さんを思うように助けることができず悩まれたそうです。そして、日本で研鑽、経験を積みつつも、最良の肝臓外科医になるというご自身の目標からデンマークへ行かれたそうです。しかし、デンマークでも差別や理不尽な扱いを受けたものの、どうにか踏みとどまられました。今では、デンマークや世界にとってなくてはならない存在になられています。日本を出て海外という厳しい環境だったからこそ成長できたと振り返られ、これからの医療を担う私たちに向けても、「失敗を恐れず、勇気を持って、海を渡って、暴れてください」という力強いメッセージをいただきました。
福森先生のご講演は普段、大学で学んでいるだけでは得られないことばかりでした。国が変われば、医療のシステムはもちろんのこと、医療に対する考え方も大きく異なることを学びました。やはり医師になるからには、何かの分野で最高の医師になりたいと思うものです。将来は日本だけに目を向けるのではなく、世界に羽ばたくことで、最高の医師になれるよう頑張ります。
広報サポーター 医学科2年 田中裕一郎