公開日 2024年07月04日
医学部附属病院では、がんの免疫療法として有効な「CAR-T細胞療法」に使用する製剤について、これまで使用可能であった「キムリア」に加えて、より効果の高い「イエスカルタ」の使用施設認定を2024年6月に取得しました。イエスカルタの認定施設は山陰では初、中国地方では2施設目となります。
CAR-T細胞療法(キメラ抗原受容体改変T細胞療法)とは、難治性がんの治療法として開発された免疫療法で、リンパ球の一つであるT細胞に遺伝子導入を行い、腫瘍を攻撃させる画期的な治療法です。この治療を実施できるのは国内で認定された施設のみですが、附属病院では2021年よりキムリアの使用を開始し、続いてこの度イエスカルタの使用認定も取得しました。
キムリア・イエスカルタは、ともにCD19抗体の遺伝子を導入したCAR-T細胞療法製剤です(図1)。CD19抗体は、B細胞リンパ腫やB細胞性の急性リンパ性白血病に発現するCD19抗原を認識する抗体で、これを介してCAR-T細胞がリンパ腫細胞・白血病細胞に結合して抗腫瘍効果を発揮します。抗がん剤や分子標的薬とは作用メカニズムが異なるため、これらの薬剤に耐性になった腫瘍細胞にも効果が期待できます。
イエスカルタは、欧米でも使用されている世界基準の細胞治療製剤で、キムリアより強い細胞刺激効果があるとされています。適応疾患がキムリアと異なるほか(図2)、共通の適応疾患であるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫では、キムリアが三次治療以降でしか使用できないのに対し、イエスカルタは二次治療以降で使用可能なため、治療の恩恵を受ける患者さんがより多くなることが考えられます。一方で、CAR-T細胞療法の副作用であるサイトカイン放出症候群や免疫細胞関連神経毒性症候群はイエスカルタの方が強いとされるため、集中治療室などの院内部門との協力体制の下で、合併症対策にしっかり取り組んでいきます。
附属病院では、血液疾患患者さんのより一層の治療成績の向上を目指して、輸血部などの細胞調整部門との連携を図り、今後も努力を続けていく所存です。
図1:CAR-T細胞の違い
図2:適応疾患の違い
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