医学部長メッセージ
このたび、2025年10月1日付で島根大学医学部長に就任いたしました竹谷健(本学15期生)です。島根大学医学部を志す皆さん、そして在籍する学生・大学院生、また日頃から本学を支えてくださっているご家族や地域の皆さまに、心よりご挨拶申し上げます。
島根大学医学部は、1976年の開設以来、「地域に根ざし、世界に発信する医学の実践」を使命として歩んできました。これまで数多くの医師・看護職・研究者を輩出し、地域医療の最前線を担うとともに、国際的にも意義ある研究成果を示してきました。しかし現在、少子高齢化や人口減少、地域の医療提供体制の変化など、我々を取り巻く環境は大きく揺れ動いています。こうした変化に対応し、さらに次の50年を見据えて発展を続けるため、私は以下の方針を大切にしていきます。
第一に、「誰もが安心して挑戦できる医学部」を実現します。そのためには、学生や教職員が時間的・精神的な余裕を持ち、自らの能力を十分に発揮できる環境づくりが欠かせません。属人的な対応に依存するのではなく、透明性と再現性のある仕組みを整え、教育・研究・診療のすべてにおいて持続可能な体制を築きます。
第二に、教育の充実です。入試改革を通じて、知識のみならず探究心や協働力を備えた多様な学生を受け入れ、卒業までに「実際の場面で成果を出せる力(コンピテンシー)」を育成します。主体的な学びを支援するとともに、技能や態度については明確な評価基準を用いた形成的評価を導入します。医師・看護師を目指す皆さんが、専門職としてだけでなく人間として成長できる教育環境を整えてまいります。
第三に、研究活動の推進です。基礎から臨床にわたる幅広い領域で、若手研究者を含む一人ひとりの挑戦を丁寧に支援し、国内外との共同研究や産学官連携を強化します。研究成果を地域医療や社会に還元すると同時に、国際的に発信することで、島根から世界へ新しい価値を生み出していきます。
第四に、地域社会との共生です。島根県は豊かな自然と文化を有する一方で、医療資源の偏在や人口減少といった課題を抱えています。本学は県内の教育機関・医療機関・行政と連携し、医療人材の養成と派遣を通じて、地域の持続可能性に貢献します。また、ICTやデジタル技術を活用した遠隔教育・遠隔診療を推進し、離島や中山間地域に暮らす方々も安心できる医療体制の確立に努めます。
最後に、グローバルな視点を持った人材育成です。国際的な教育・研究機関と協働し、「地域と世界をつなぐ」活動を推進します。学生の皆さんには、ローカルな課題に向き合いながらグローバルな解決策を考える力を養っていただきたいと願っています。それが「Planetary Health(人と地球の健康)」の実現につながると確信しています。
これからの医学部は、知識や技術を身につける場であると同時に、人としての成長を支える共同体でなければなりません。島根大学医学部は、皆さん一人ひとりの夢や志を大切にしながら、地域とともに未来を拓き、世界とつながる医学部であり続けるよう努力してまいりますので、ご指導ご教示のほど、よろしくお願いいたします。
島根大学医学部長 竹谷 健(たけたに たけし)