島根大学医学部整形外科学教室
MENU
トップページ
はじめに
教授室より
診療案内
医局員紹介
研究内容
診療実績
関連病院
学会情報
入局案内
リンク集
トピックス
サイトマップ
会員専用ページ
SMART
メール

トップページ研究内容 > 教室の研究 > 学校健診における運動器検査
研究内容

研究内容へ戻る

教室の研究
スポーツ外傷・障害の治療 再生医学
腱縫合の研究 骨折治療支援システム開発
学校運動検診
学校健診における運動器検査(学校運動器検診)の創設と普及

助教 門脇 俊
 
現在のこどもたちがかかえる運動器の健康問題

 「運動器」という言葉をご存じでしょうか。心臓や血管を「循環器」、胃や腸を「消化器」と呼ぶように、運動に関与する骨、関節、筋肉等の臓器を「運動器」と呼びます。従来運動器は内臓と比較して生命への影響の少ないものとして扱われていました。しかし高齢化の進んだ現代では要介護となった方の30%は骨折、腰痛や膝関節痛という運動器疾患による移動能力の低下が原因であり、運動器疾患は日常生活動作を低下させ、ひいては生命にも影響を及ぼすものとして重要視されるようになりました。折しもこどもたちの運動不足、運動能力の低下、それに伴う学校でのケガの増加が社会問題となっており、運動器の健康は高齢者のみならずこどもたちの健全な育成にも重要であるといえます。

 これを受けて当教室では2005年より島根県内の小中学校、高校の生徒約5000名を対象に四肢骨や関節の疾患を対象とした検診(運動器検診)を実施し学校における運動器疾患の実態を調査しました。その結果、こどもたちの10~20%が運動器疾患をかかえており、そのうち40%程度はスポーツ活動に関連するケガや障害であることが明らかとなりました。学校保健における運動器疾患の重要性を示す結果といえますが、当時の学校保健法に基づく学校健診では運動器は対象となっていませんでした。私たちは「運動器の10年・日本協会」とともにこの調査結果を中央省庁に報告し、運動器疾患を学校健診の対象とするようはたらきかけ、ついに2016年からは学校保健法の改正により学校健診に運動器検診が組み込まれることとなりました。これにより日本全国で学校健診によってこどもたちの運動器疾患が早期発見され、医療機関へ遅滞なく受診できることが期待されます。
Topics 運動器検診を活用したスポーツ傷害の予防
 2005年の調査ではこどもたちの運動器疾患の実態のみならず、教員やスポーツ指導者、保護者のアンケート調査も実施しました。それによると養護教諭や指導者でも運動器疾患に対し誤った認識をもった方が少なくないこと、勝利至上主義や根性論が根強く残っていることがわかりました。また、前屈して床に手が届かない子が全体の4割、かかとを揃えて床につけてしゃがむことができない子が2割程度とからだの硬いこどもが多いことも明らかとなりました。さまざまな研究から体の硬さはスポーツに関連するケガや障害(スポーツ傷害)の原因となることがわかっています。

 以上から学校でのスポーツ傷害の発生原因は、からだが硬いこどもが部活動やクラブ活動でのスポーツ活動でからだに負担をかけること、それを監督・指導する大人の知識不足にあると考えました。学校運動器検診はすでに発症した運動器疾患の早期発見には有効ですがそれだけでは予防することはできません。そこで、2012年から学校運動器検診に併せて生徒全体へからだの柔軟性を高めるためのストレッチ方法を指導し、教員に向けてはスポーツ医学に関する講習を実施して正しい知識を伝授しスポーツ傷害を予防する取り組みを開始しました。さらに2014年からは理学療法士を月に1回学校に派遣して運動指導を実施することで、柔軟性が改善、筋力・バランス力が向上するという成果を得ました。また学校運動器検診にも理学療法士を同行させ、検診でスポーツ傷害とされた生徒に対して柔軟性や筋力、姿勢の不良を改善するためのストレッチやエクササイズ方法を個別指導することでスポーツ傷害の治癒に効果を上げています。このように理学療法士をはじめとした医療専門職をスクールトレーナーとして活用していこうとする試みが始まっています。


写真:学校でのストレッチ指導の様子

ページの先頭へ

Copyright(c) 2003 Department of Orthopaedic Sugery, Shimane University School of Medicine. All Rights Reserved.