膝蓋骨脱臼 
膝蓋骨脱臼は、10代の女性に生じることが多く、ジャンプの着地などで、膝を伸ばす太ももの筋肉(大腿四頭筋)が強く収縮したときに起こります。

(日本整形外科スポーツ医学会「スポーツ損傷シリーズ12」から引用)

膝蓋骨亜脱臼のエックス線像(右膝)
膝蓋骨は大腿骨に対して外側に脱臼することがほとんどで、自然に整復されることも少なくありませんが、20〜50%の方が繰り返し脱臼を生じます(反復性脱臼)。
膝蓋骨を触れたときに医療者が感じる「ゆるさ」や、膝蓋骨が外れそうであると患者さんが感じる「こわさ」は、治療をするうえで重要なポイントです。手術により膝蓋骨が脱臼しなくなっても、「ゆるさ」や「こわさ」が残ると治療は成功とは言えません。しかしながら臨床の場ではよい評価方法がありません。

膝蓋骨を外側へ押すと「こわさ」を自覚する
そこで当教室では、膝蓋骨の不安定性(ゆるさ)の客観的評価を可能にする新しい検査方法として、膝蓋骨内側および外側の剛性が計測可能な膝蓋骨検査器を開発しました(島根大学医学部医の倫理委員会承認 558号)。この機器を使用することで、「ゆるさ」を数値化できるようになり、治療法選択の参考にしたり、術後の客観的評価をしたりすることが可能になりました。

当科で開発した膝蓋骨検査器(キシ・エンジニアリング株式会社と共同開発)
また患者さんが感じる「こわさ」に対して、脳内微小血流変化をとらえ脳賦活部位を特定することで患者さんが自覚する不安感を可視化するfunctional
MRIの研究に取り組んでいます(島根大学医学部医の倫理委員会承認 660号)。この手法は、膝蓋骨脱臼だけでなく膝前十字靱帯損傷の患者さんが感じる「こわさ」を評価することも可能になると考えています。

機能的MRI.左図(健常者)では,task(膝蓋骨を外側へ押す)によって運動認知をつかさどる対側の一次体性感覚野が賦活しているが(白丸),右図(患者)では賦活されていない.将来の予測や情動的ストレス予測をつかさどる背外側前頭前野がtaskによって賦活されている(緑丸).
(門脇,内尾ら.別冊整形外科,2012)
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