01_ようこそ、島根大学医学部へ。

      ようこそ

2019年現在、全国の医学部が新カリキュラム導入へ向けて過渡期を迎えています。そこで今回は並河先生より島根大学らしさを活かした医学教育づくりの展望と、学生の皆さんへのメッセージを伺いました。 

カリキュラム改革を迫られる医学教育

   医学科における新カリキュラム導入の目的は、従来型の医学教育を医学研究や医療の実践に即したより良いものに変えていくことで、多くの大学と同様USMLE(アメリカの医師国家試験)の受験資格に関わる国際認証受審が契機となっています。 

  一番大きく変わる点は、病院実習の期間が長くなるということですね。そのために基礎臨床ともに座学の時間は短くなります。そして病院実習のやり方も、これまで以上に、医療チームの一員として参加できる形に変えていくことが必要です。

大学の意味を問う

   今の医学教育は高校の延長のような受け身のかたちとなっていますが、大学教育とは何かを考えると、本来はそうではありません。自分で勉強したいことを見つけて、進んで取り組むのが大学という場所。ただし、医学部というのは医師や看護師を育てるということが目的なので、一定水準のスキルを身につけてもらわなければならず、これは一見すると矛盾しています。

   現在のカリキュラムは本当にぎっしり詰まっているので、レールに乗ってしまえば何も考えずに進むことができてしまう。しかし医療者になってから必要な力というのは、受け身で学んだことだけでは絶対に足りません。このバランスをどう取るかが医学部としては難しいところです。

   社会人としての素養も正規の大学カリキュラムの中で教えることはできないため、学生自ら身につけてもらわざるを得ません。そのためにも学生が自由に活動できるよう時間的な余裕を確保したい。そして地域をはじめ大学の外の世界へ積極的に飛び出していけるような人になってほしいと思いますね。

幹と枝葉を知る学び

   今の学生さんを見ていると、教科書を読まない。過去問とレジュメだけで勉強して点数さえ取れればいいという人が多くなっています。それでは医療者になったときに使える知識を身につけようとしているとは到底言えません。非常に断片的な知識しか持っていないし、試験が終わればすぐに忘れてしまう。

  知識の中にある幹と枝葉の区別がついていないのかな、教科書を読んでいないから。教科書には各章と細かいセクションがあるので、その学問の構築の仕方を理解することが出来ます。どこが基本でどこが細かい知識なのかは目次を見るだけでも分かりますよね。試験に出るか否かは別として、この幹の部分はしっかり身につけてもらわなければいけません。

  こういう系統的な勉強を学生さんには実践してほしいと思います。だから、どの教科でもいいので教科書を丸ごと一冊最初から最後まで読んでください。英語であれば一番いいけれど日本語でもいいから、とにかく最初から最後まで。自分が面白そうだと思った教科でいい。とりあえずはひとつだけでもいいと思います(後々増やしてほしいですが)。一科目でも自分はここが強いと言えるものがあるだけで、すべての科目の’perspective’を得られます。

  まずは基礎系の科目から。好みに合わせて生理学や生化学、組織学を選んではどうでしょうか。他にも免疫学や遺伝学だって面白い。生理学は内科の基本になるので、必ず後で役に立ちますよ。最初は薄くても幹の部分がしっかり書いてあるような教科書で十分です。看護学科などで使っている教科書も良いですね。高校までの知識がしっかりしていれば中身は十分理解できます。

  最後にひとつ、どれだけ人より良い点数で試験に通ったかということはあまり重要ではありません。合格したのに人より何点取ったかなんて気になるのは、受験生マインドではないかと思うんですよ。これまでお話ししたような本質をちゃんと理解していることが大事なわけだからね。

 新入生へメッセージ

  とにかく受験生マインドは捨てろ、ということですね。そして大学生活は楽しんで。楽しむというのはただ遊ぶだけではなく、大学生とは何かを考えながら時間を使ってほしい。 「医療者になるために自分は何をすればいいのか」と。そう自問しながら過ごしてもらえれば、それだけでもきっと沢山のことが身につくはずです。