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不眠は高血圧、糖尿病、がんの発症などに加え、せん妄(強い寝ぼけのような症状)やうつ病など各種精神疾患の発症、増悪に関連しています。不眠に対しては1800年代の抱水クローラ、1900年代初頭のバルビツール、1960年代にはベンゾジアゼピン系薬剤、1990年代からはZ-drugと呼ばれる睡眠薬が用いられるようになりましたが、その筋弛緩作用による転倒や短期的な認知機能障害によるせん妄の惹起など多くの問題がありました。2014年にオレキシン受容体アンタゴニストであるスボレキサントが臨床使用されるようになりました。従来からある睡眠薬と比べると高い安全性や低い依存性など、多くの利点があります。さらに、浅い睡眠だけを増やす従来の睡眠薬と比べると、深い睡眠や夢を見るレム睡眠を増やすなど、睡眠構造を保ったまま睡眠を増やすという特性があります。せん妄の発症や生命予後にレム睡眠の減少が関与しているという報告もあり、オレキシン受容体アンタゴニストによる、単に不眠の解消に留まらない様々な疾患の予後改善が期待されます。


本講座では、島根大学の集中治療室に入院した患者さんのうち、699名(うち84名がスボレキサント使用)の患者さんを検討し、せん妄の発症はスボレキサント服用群で17.9%(84人中15人)、非服用群で32.4%(615人中199人)と、スボレキサントの使用は有意にせん妄の発症を低下させることを確認しました(P=0.007)。年齢、症状の重篤度、人工換気の有無、他の薬剤の使用など、せん妄発症に影響のある因子を含めて解析しても、有意にせん妄発症を抑制しました(ハザード比* 0.473,95%信頼区間0.268-0.832,P=0.009)。

 

本研究は国際学会誌に掲載されました(Izuharaら,Real-world preventive effects of suvorexant in intensive care delirium: a retrospective cohort study,Journal of Clinical Psychiatry,2020 PubMed


本講座ではさらに研究を深め、睡眠でお悩みの患者様によりよい治療を提供できるよう邁進して参ります。


*ハザード比:相対的な危険度。ここでは1未満でせん妄発症が少ない。


統合失調症発症予防を目指した簡便かつ非侵襲的なスクリーニングシステムの開発

 

<研究の目的>
この研究の目的は、精神疾患の早期診断のための客観的指標を見つけることです。精神科疾患の多くは、早期段階において疾患を発見し適切に治療することが、症状や機能障害のより良好な回復につながると報告されています。特に思春期から青年期中期までの発達期が治療介入を行う重要な時期であるとされているにもかかわらず、これまでに患者を早期にあるいは発症前期にスクリーニングできる簡便な方法や生物学的マーカーは確立されていません。本研究では、児童思春期の精神疾患を発症する前段階で、唾液、尿を用いた非侵襲的で簡便な生物学的マーカーのスクリーニングシステムを構築することを目的としています。これらが確立されれば、精神疾患発症前の児童を早期に見出すことが可能となり、早期介入、早期治療によって多くの患者の予後が改善されることが期待できます。

 

<研究成果の概要>
精神病発症危険状態(at risk mental state : ARMS)の児童思春期の症例に対して「尿中及び唾液中のバイオマーカー」を測定した結果、健常群と比較して尿中のバイオマーカーの変化が明らかになりました。これらの結果から、尿中バイオピリン値、FLC値などのバイオマーカーを用いて統合失調症発症前駆期の早期診断が可能となり、早期介入の客観的指標となり得ることが示唆されました。

 

【H26年度〜H29年度 科研費 若手研究(B)】

 統合失調症発症予防を目指した簡便かつ非侵襲的なスクリーニングシステムの開発
 (研究代表者:和氣 玲)

 

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