今年の5月1日に島根大学医学部精神医学講座に赴任しました。既に(やっと?)半年が過ぎました。
当講座および当院精神科の活動の一つを紹介させてください。私達は、総合病院としての精神科リエゾン・コンサルテーション活動を基盤に精神障害を患った人の身体疾患の治療が円滑に行われるための支援・診療、逆に致死的な急性傷病または苦痛な慢性身体疾患を患う患者の心理的負担の軽減の両方を目指して日々の診療にあたっています。精神障害による日常生活の困難のために、生活基盤が脆弱となりその結果として様々な疾患に罹患しやすくなることが知られています。例えば、統合失調症患を患う人はそうでない人と比較して平均寿命が10年短いとも言われており、その原因として虚血性心疾患、脳卒中、がん、慢性呼吸器疾患、糖尿病などが挙げられます。これは統合失調症の方々が適切な生活支援を受け、適切な医療・保健を十分に受けることができていれば避けられるはずのものです。残念ながら、未だに「健康格差」があるのが実情です。現在、岡山大学と関係する地域の病院や国立がん研究センター等と協働で、統合失調症患者のがん検診受診率を上げるための取り組みを行っています。また、同様に、統合失調症患者の喫煙率を下げる取り組みも行っています。これらにより、がんの早期発見と適切な治療への導入による健康格差が是正できればと希望しております。
また、後者の、致死的な急性傷病または苦痛な身体疾患を患う患者の心理的負担の軽減のために、救急搬送された自殺未遂者への継続的で包括的な支援の提供、周術期の患者の精神・心理的な支援などに力を入れています。院内のリエゾン・コンサルテーション活動に、精神科のスタッフ全員で取り組んでいます。
総合病院としての当講座・当科の役割の一部を紹介させていただきましたが、これらの取り組みだけでなく、広く地域から求められる精神医学・精神科の役割について、島根県の他の総合病院精神科、精神科病院、精神科クリニックとの協働・連携を強めて、途切れることのない地域連携精神科医療を構築し、精神疾患だけでなく多くの複雑な問題を抱え、支援を必要としている人々に対して、適切な精神科医療が提供できる体制を作っていきたいと考えております。引き続き、皆様方のご支援のほどいただきたく、何卒よろしくお願い申し上げます。
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