公開日 2017年09月11日
小児科学講座 小林弘典 助教らが、新生児の希少疾患を発見する血液検査「新生児マス・スクリーニング検査」で、「オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症」を発見する手法を世界で初めて開発し、記者会見を行いました。
【新生児マス・スクリーニング検査とは】
1977年から開始され、新生児全員を対象とし、検査料は無料です。生後5日前後の赤ちゃんのかかとから採取した少量の血液をろ紙に染み込ませ、検査機器を用いて、先天性疾患の有無がないか検査します。この検査によって希少難病の早期の発見が可能になり、未発症のうちに治療ができるようになったため、開始から34年間に1万人以上の小児が障害の発生を免れたといわれています。2014年には、より多くの小児疾患の発見が可能な「タンデムマス・スクリーニング検査」が全国導入されました。
【オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症とは】
尿素合成経路の代謝系に先天的な異常があり、体内に有害なアンモニアを肝臓で無毒な尿素に変えることができない尿素サイクル異常症の半数を占め、発生頻度は8万人に1人です。意識障害や、発達の遅れを引き起こし、突然死の原因になります。
【分析の手法】
OTC欠損症はアミノ酸の一種オロト酸の分析数値が上昇していることによって発見されます。小林助教は、タンデムマス機器の陰イオンモードを使用することに着目し、オロト酸の抽出・分析における新たな手法の確立に成功しました。
現在、当院は島根県の委託により、県内で出生した赤ちゃんを対象に25項目の「新生児マス・スクリーニング検査」を行っています。8月21日からは、当院で出生した赤ちゃんを対象に「OTC欠損症」検査も無料で実施しています。
今後は、県内病院からの検査依頼も順次受け付けてまいります。
(記者会見の様子)
(向かって右から、小児科学講座 小林弘典 助教、井川幹夫 病院長、小児科学講座 竹谷健 教授、臨床検査医学講座 長井篤 教授)
(タンデムマス機器を扱う小児科学講座 小林弘典 助教)