病院長挨拶

 島根大学病院長の椎名です。島根大学病院では、「地域医療と先進的な医療を調和し、良質で安心・安全な医療を地域に還元すること」が基本理念です。一方、島根県では令和6年4月から新たな島根県保健医療計画を策定しており、当院もこの保健医療計画に照らし合わせ、5 疾病・6 事業の医療提供体制を整備し、さらに在宅医療につながる高齢者医療の橋渡し的役割にも積極的に取り組む必要があります。

 当院に求められる医療の本質は「利他行」にあります。病院の実践的な診療に加えて、その基礎となる部門の管理・運用も大学病院の診療には求められます。これら病院組織の地域の皆さまの健康を守るために、当院では次のような改革を推進していきます。

1)島根創生に資する医療提供体制への改革
 地域全体の健康を支えるために、医療提供体制を強化し、島根の創生に貢献する医療を目指します。高齢者医療やがん医療のみが当院に求められる医療ではありません。少子高齢化対策を小児医療の充実の観点から考察し、地域に若い世代を中心に安心して定住できる環境を整備することが地域創生の重要な鍵です。小児医療では、小児心臓外科や小児脳神経センターなど小児の外科疾患に対する医療提供体制を充実化するとともに医療的ケア児の支援やAYA 世代を含む移行期医療支援の仕組み作りを行い、緩和医療は新たに緩和ケアセンターを新体制のもと構築し、人生会議など地域との橋渡しができるよう体制整備を行なっていきます。移植医療は腎移植以外にも肝臓移植が可能な体制整備を整えます。高齢化に伴い関心が高い認知症に対しては、認知症疾患医療センターと放射線部を中心に、その診断に必要な PET/CT の利便性を図っています。また、島根創生に資する医療環境の整備として、スポーツメディカルセンターを立ち上げ、健全なアスリートの応援・支援をしているところです。

2)地域における医療人材の確保に向けた改革
 地域に根ざす確実な医療提供には、優れた医療人材の確保が必要です。医療資源の少ない診療科の体制整備には医療ネットワークの構築が求められます。医師の働き方改革を念頭におき、地域医療政策センターを新たに設置しました。卒後臨床研修センター、病院医学教育センターや総合診療医センターをはじめとする地域医療総合教育センターを中心に島根県行政との連携をより強化し、島根県全体を俯瞰した実践的な医師派遣と医療提供のあり方を実践いたします。

3)職場環境の改善による働きやすい環境への改革
 職員が働きやすい環境を作ることは、患者さんに最高の医療を提供するために不可欠です。職場環境改善支援センターや出雲保健管理センターの活動を活性化し、産業衛生面でも心理的安全性が高く働きやすい病院組織を目指し、全ての職員が持てる力を最大限に発揮できるよう努めています。職員の時間外勤務是正に向けた取り組みの強化が求められる中、患者さんやご家族への説明は原則勤務時間内に行うことになりますので、よろしくご理解のほどお願いいたします。

4)組織横断的な研究活動への改革
 最先端の医療技術と知識を地域に還元するために、当院は組織横断的な研究活動を推進しています。新しく設置した統合腎疾患制御研究・開発(IKRA)センター、基礎医学との連携を強化した再生医療センターや学長直下のワクチン開発センターなど、より効果的で最新の医療を地域に還元することを目標に活動し、患者さんの健康維持に貢献します。

 島根大学病院は、近隣の医療機関と密接な連携を図りながら、職員一人ひとりが一歩一歩着実に医療の本質に向かって邁進しています。「安全・安心な最善の医療」を病院の総力として発揮し、地域に根ざし信頼される病院を実現するために、これからも努力を続けてまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

島根大学医学部附属病院長
島根大学理事(医療担当)