島根県における地域資源素材(ヒノキ)の健康医学への応用-「ウッドアロマ」による腰痛軽減効果の検討-

公開日 2009年05月19日

(平成21年5月19日:報道発表)

リハビリテーション部 蓼沼 拓

 本学では産学共同研究事業として地元企業との共同研究を実施し、研究結果を地元へ還元しています。2008年度、リハビリテーション部は荒木建具店(出雲市平田町)と共同研究を実施し、その結果は2009年4月に最終報告が行なわれました。本稿ではその研究内容と結果について報告します。
 荒木建具店は島根県産の檜材へ複数のスリットを入れ柔らかくした板を寝具へと応用した製品を開発・販売しています。本製品の使用者から腰痛の軽減効果が複数報告されており、その検証目的で産学連携研究へ依頼されました。
 慢性腰痛は骨関節や筋組織の損傷以外にも社会的・心理的要素などさまざまな原因が混在して生じる疾患であるといわれています。「痛み」そのものが他覚的な所見ではないこともあり、除痛のメカニズムの検証よりも、使用することで症状がどう変わるかに主眼をおいて評価を行うことにしました。
 調査は慢性腰痛を持つ成人43名(男性24、女性19名)を対象として、8週間を1期として夏期(2008年7月~8月:20名)と冬期(2008年11月~12月:23名)の2期に各人を振り分けて調査を行いました。
 全対象者に対して腰痛に関する自己記入式のアンケート調査、すなわちVASおよび疾患特異的・患者立脚型慢性腰痛症患者機能評価尺度(JLEQ : Japan Low back pain Evaluation Questionnaire)を用いて、寝具の使用で症状がどう変化していくかを追跡調査しました。あわせて腰椎X線写真の撮影を行って、疼痛の程度と腰椎の変性度との関係も評価を行ないました。
 最終調査時まで38名の追跡が可能でした。腰椎X線写真上、加齢変化の所見は見られましたが、疼痛の強さと相関は見られませんでした。VAS・JLEQの得点は個人差はあるものの8週間で改善傾向にあり統計学的にも有意な差が生じていました。
 今回の調査により慢性腰痛に対しての症状軽減効果が明らかとなりました。疼痛が軽減した要因として、適度な“しなり“による体圧分散効果や檜の香りによるリラクゼーション、スリット間に空気がとどまることによる温度調節などが考えられますが、今回の調査はあくまで症状の変動を捉えることを目的としたため、詳細は明らかとはなっていません。今後製品の物理的特性についての評価も必要と考えられます。

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