世界で初めての逆流性食道炎診断機器について

公開日 2010年04月22日

(平成22年4月22日:報道発表)

第2内科 古田 賢司

 近年、逆流性食道炎の患者さんが増加傾向にあります。逆流性食道炎は、胃から食道へ逆流した胃酸が食道の粘膜を刺激・傷害することで起こります。逆流性食道炎の患者さんでは、胸やけ・呑酸などの症状がみられ、ひどくなると食指不振、体重減少、睡眠不足など生活にも影響を与えます。さらには胃酸による食道粘膜の傷害により出血や狭窄などの合併症を来すこともあります。また日本人ではまだ頻度は少ないのですが、胃酸による慢性的な食道粘膜の傷害により食道本来の上皮とは異なる上皮(バレット上皮)が出現し、さらにはそのバレット上皮の中に悪性細胞(バレット食道腺癌)が出現する危険性も報告されています。我々の研究室では木下教授のもといち早く逆流性食道炎の研究を始め、現在では日本の中でも逆流性食道炎の診療・研究に関してはトップクラスの施設となっています。逆流性食道炎は、食道粘膜の小さい傷が見られる軽症型と広い範囲に傷が見られる重症型に分類されます。以前の我々の検討から食道炎の軽症例、重症例、バレット腺癌は食道の右前方向に好発することが明らかとなりましたが、なぜその方向に好発するのかその理由は明らかとはなっていませんでした。もともと胃酸の逆流が食道炎、バレット腺癌の原因と考えられていることから、病変ができやすい部位に胃酸の逆流が多い、または長く酸がとどまっていることが予想されますが、それを証明する方法がこれまでありませんでした。そこで、今回我々は同一平面上の8方向のpH(アルカリ性か酸性か)を同時に測定できる新しいpHセンサー(図1、2、3)をスターメディカル社の協力の下開発し、実際の逆流性食道炎の患者さんで酸逆流はどの方向が多いのか、更に逆流したその酸はどこに長くとどまっているのか検討しました。その結果我々が予想していた通り、軽症型の逆流性食道炎患者さんでは右前方向に酸の暴露が多いことが明らかとなりました。
 今回開発した8方向・8チャンネル・pHモニタリングシステムを用いて検査をすることで、患者さんごとに病気が起こりやすいと考えられる部位を予測することが可能となります。そして短時間に大事なポイントを観察することが可能となるとともに、バレット腺癌の早期発見・早期治療につながることが期待されます。

8方向・8チャンネル・pHモニタリングシステム

8 方向・8 ch・pHセンサーカテーテルと測定中のレントゲン写真

pH逆流8ch解析システム