がん患者に個別の食事を提供

公開日 2011年01月13日

(平成23年1月13日:報道発表)

臨床栄養部栄養士長 川口 美喜子 

 島根大学医学部附属病院臨床栄養部では、化学療法や放射線治療の副作用や栄養状態が低下し、食欲不振、味覚障害や吐き気などに苦しむがん患者のためにがん患者の専任栄養士を配置する取り組みを行っています。専任の栄養士は、毎日患者のベッドサイドを訪問し状況、要望を確認し当日の食事に反映させて調理を提供しています。これは全国国立大学病院では始めての試みであり成果も上がっています。専任の栄養士を配置したのは2006年。患者の食事と栄養量の増量によって、栄養状態の維持とともに「食べる」喜びを延長し「生きる力」につながっていくことが期待されます。
 「味がない」「飲み込みにくい」「においが気になる」などの患者から聞き取った要望を基に、医師や看護師と連携し栄養管理を行い、症状別のメニューも考案しています。
例えば、魚を食べたいが、のど越しが気になる患者には「魚のムース」(骨を取った煮魚をミキサーにかけてムースにする)、「魚のおろし包み」(ほぐした煮魚に泡立てたメレンゲを加え丸める。おろし大根にゼリー剤加えて魚団子を包む。)お餅は喉に詰まる危険がありますが、高齢者は食べたい料理であり、その代わりにじゃがいも餅(じゃが芋をつぶしてフライパンで焼く)、かぼちゃのすいとんなども取り入れています。
 過去4年間で食道がんや血液がん、肺がん患者など83人の治療を食事で支えてきました。専任栄養士は「治療がつらく、食事のことなど考えられない」と言われた事もありましたが患者に寄り添って、要望を聞きメニューづくりにつなげました。現在、がん患者のためのオリジナルメニューが200種類以上になりました。患者のエネルギーやたんぱく質摂取量の増加と食事によって患者の心が癒されることも多くなったように思います。臨床栄養部では今後も個別対応の食事にこだわりたいと思っています。

おじや
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ふわふわオムライス
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