公開日 2014年08月20日
(平成26年8月:最新治療)
産科婦人科 教授 京 哲(きょう さとる)
増えている若年子宮頸癌
近年、若年の子宮頸癌の発症が急増しています。性交渉を通じたヒトパピローマウイルス(HPV)感染が発症の原因となり、特に悪性型HPVが感染すると、前癌病変である異形成から上皮内癌へと段階的に進行し、ついには転移能のある浸潤癌へと進展していきます。
子宮頸癌の子宮温存治療
妊娠可能な若年層の子宮頸癌が増えていることは、子宮頸癌に対する妊孕性温存手術の必要性がより一層高まっていることを意味します。上皮内癌までの前癌病変に対しては子宮頸部の病変のみを円錐状に切り取り、子宮頸部の大部分と子宮体部を温存する円錐切除術が広く行われてきました。一方、より悪性度の高い浸潤癌においては、円錐切除では切除範囲が不十分で、取り残しや再発が起こり、浸潤癌に対する根治手術にはなり得ません。浸潤癌に対しては、通常は子宮摘出(広汎子宮全摘術)が根治手術として行われ、患者さんは妊孕能を失うことになります。子宮頸部に発生した頸癌を十分に切除しながら子宮を温存するために開発されたのが広汎子宮頸部摘出術(トラケレクトミー)です。これは子宮頸部を完全に切除することで根治性を高めます。そして、頸部の切除により残った子宮体部と腟を繋ぎます(図)。これにより根治性を高めながら妊孕性を温存するのです。もちろん卵巣も残します。頸部の切除範囲の決定や、子宮機能維持のための重要血管の温存など、高度な技術を要するため、現在でもごく一部の大学病院など限られた施設でしか行われておりません。当院は島根県で唯一この術式を行う施設となっており、妊娠中の手術も可能です。
自律神経を温存する新術式の開発
通常の手術では切れてしまう自律神経膀胱枝のみならず、子宮の機能維持と妊娠成立に重要な役割を果たす自律神経子宮枝を温存する画期的な術式を開発しました。この自律神経子宮枝温存術は、現在世界で当院のみが施行可能な手術となっております。この手術を通じて、島根県の女性が子宮頸癌に罹患しても安心して子供を産めるようにしていきたいと考えております。
【問合せ先】産科婦人科 TEL: 0853-20-2389