治療法がないと言われ続けた難治性緑内障に希望の光を。

公開日 2013年07月19日

(平成25年7月:最新治療)
眼科  谷戸 正樹 講師

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谷戸 正樹 講師

日本で失明になる原因の第一位は何だと思いますか。それは、緑内障です。日本人で言えば、失明する人の5人に1人が緑内障。特に高齢者の方だと2人に1人です。目の中には、目と脳をつなぐ視神経があります。目に入ってきた光が網膜で受け取られ、視神経を通っ て脳に伝わりモノが見える仕組みになっていますが、緑内障というのは、視神経が徐々に萎縮してくる病気のこと。現在、再生医療がもてはやされていますが、萎縮してしまった視神経を元に戻すという方法は今のところありません。つまり、緑内障を完全に治療すること は現在の医学ではできないのです。しかしながら、緑内障の進行を遅らせるように予防することはできます。緑内障という病気は、眼圧を低く保つと視神経の萎縮が遅くなるという特徴があります。人間には寿命がありますから、寿命の間モノが見えるように、眼圧を下げて視神経の萎縮を遅らせるという方法が、現在のところ緑内障の最も効果的な治療なのです。

緑内障の眼圧を下げる手術として一般的なのは、「トラベクレクトミー」という手術です。しかし、「トラベクレクトミー」は、効くこともあれば、効かないこともあります。眼圧が一度下がったけど、また上がってくるケースもしばしばあります。そういった「トラベクレクトミー」が効かない患者さんに対して、効果が期待できる手術が「チューブシャント手術」です。これは、医療器具を目に 移植する手術で、何回も目の手術を行ってきた患者さんに効果的であると言われています。しかし、問題はこの移植に用いる器具が海外ではずいぶん昔から認可され使われてきたにもかかわらず、日本ではずっと認可されなかったのです。海外では「チューブシャント手術」を行って助かるはずが、日本では助からないという状況が、長い間続いていました。


「チューブシャント手術」は2012年4月にようやく日本でも保険診療が始まりましたが、一般的に解禁されてもなお、まだまだ少ないのが実状です。島根大学医学部附属病院では、2008年から全国の大学病院に先駆けてチューブシャント手術を行っており、手術件 数はもうすぐ100例になります。高齢になるにつれて増えてくる病気だけに、これからも治療や研究、指導を重ねていくことで地域医療ひいては医学の進歩に貢献していきたいですね。

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「緑内障チューブシャント手術のすべて」

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【目次】
6.Ahmed 緑内障バルブの特徴と手術手技 谷戸正樹
(P.62)