iPadの手術現場での利用について

公開日 2012年01月01日

(平成24年1月:最新治療)

泌尿器科  椎名 浩昭・平岡 毅郎・井川 幹夫

 泌尿器科では昨年10月19日から本院で初めて、今話題のiPadを手術室で活用しています。iPadは軽くて薄いタブレット型コンピューターです。手術室での利用にあたっては、術野で操作できるようにiPadを清潔下で準備しておくことが重要です。手術前に、CTやMRIをDICOM画像としてiPad用OsiriX(市販のsoftware)に取り込んでおきます。特に横断面のみならず、矢状断あるいは冠状断での画像を取り込み3次元の画像を構築しておくと便利です。こうすると、手術中にiPadを用いてより詳細に画像を読み取ることができるからです。

 手術を成功させるには“チーム”で手術を行っているという認識が必要で、そのためには「情報を共有する」という意識が非常に重要となります。手術中に遭遇した構造物の特徴を把握しにくい場合は、その場でiPadを利用して手術前に構築した画像と比較します。iPadに取り込まれた画像はその場で鮮明に拡大することが可能で、術前のCTやMRIを詳細に検討しながら、今そこにあるものが何であるかを執刀者のみならず手術チームの全員で再確認することができます。このようにiPadを用いると、情報の共有をしながら手術を進めることができるため、これまで以上に安全な手術を提供することが可能となります。もちろん、CTやMRIなどの画像は手術室の電子カルテの端末にも取り込まれていますが、執刀者が端末まで行って確認し、また術野に戻るのは労力が必要で決して賢明とは言えません。加えて、画像確認から戻ってきた時には、術野が微妙にずれていることがしばしばで、この場合は再度術野の調整をし直す必要があります。iPadを用いれば、このような不必要な労力から解放され、手術チームの全員と情報を共有しながら正確かつ安全に手術を進めることが可能となるのです。

 今後はiPadの画像を手術室の大モニターに写し、ポリクリ学生に対しては教育的側面から、また医療スタッフ間では「情報の共有」の観点からiPadを有効に活用し、従来と比べてより安全で質の高い医療の提供を目指したいと思います。

図
実際での手術では、iPad画像を参考にして、
腫瘍部位と周囲組織との関係を確認しながら
手術をすすめています(膀胱全摘症例)

図
iPadの画像を手術室の大モニターに投射し、
摘出予定のリンパ節、尿管の走行などを
ポリクリ学生に説明し教育面でも
活用しています(膀胱全摘症例)