切らずに治す!膀胱尿管逆流症

公開日 2011年10月02日

(平成23年10月:最新治療)

泌尿器科  本田 聡  井川幹夫

 膀胱尿管逆流症(VUR)は膀胱から尿管、腎に尿が逆流する現象を表し、最も一般的な尿路の先天異常で、新生児の約1%に認められます。細菌尿の逆流によって腎盂腎炎を発症することが多く、VURが存続していれば繰り返す腎盂腎炎によって腎の瘢痕形成に至ります。VURに対して、わが国では以前から抗生剤の予防投与か観血的逆流防止術が一般的に行われています。しかながら、予防投与については現在その有効性が再検討されている段階であり、逆流防止術は高い成功率が期待できるものの侵襲度が大きいことから、主として腎障害の危険性が高くなるような高度なVURが適応となります。一方、尿管口周囲に膨隆形成材を注入してVURを防止する内視鏡的注入療法は観血的逆流防止術に比べて格段に侵襲が少ないことから、年少の患児をもつ家族が希望することが多い治療法です。注入療法では、注入材の選択が治療成功の鍵であり、最近発売となっ たヒアルロン酸/デキストラノマー製剤のペースト(Deflux)がその有効性と安全性から用いられるようになってきており、当院においても8月にDeflux注入療法を導入しました。一般的にDeflux注入療法が有効なのは1歳以降、逆流の程度がグレードⅡ~Ⅳ度で、初回治療時の逆流防止効果は、グレードⅡでは81%、グレードⅢでは66%、グレードⅣでは46%という報告があり、逆流の程度が強いほど治療効果は低くなりますが、再度注入療法を行うことで治療成績は向上します。当科では、この「切らずに治す」VURのの新しい治療法の普及を図っていきたいと考えています。

<膀胱尿管逆流症の国際分類>

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<Deflux注入療法>

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