公開日 2011年01月02日
(平成23年1月:最新治療)
泌尿器科 有地 直子、井川 幹夫
当院は、昨年4月に県内唯一の献腎移植認定施設に登録され、院内体制の整備と移植医療の普及に向けてこれまで取り組んで参りました。島根県で献腎移植を希望する慢性腎不全患者さんは39名いらっしゃいますが、その中の1人に昨年11月12日に当院初(島根県では6年ぶり)の献腎移植を施行することができました。県外でドナーが発生し、12日に臓器の摘出が行われ、摘出された2つの腎臓のうちの片方が当院に搬送されました(図)。生体腎移植と異なり、献腎移植の場合は、移植する腎臓を体外で保管する時間が長いため、移植直後には腎臓が‘急性尿細管壊死’と呼ばれる状態になり、しばらく正常に機能しません。従って多くの場合、術後数日間は透析治療を継続する必要があります。今回当院で移植を受けた患者さんも、充分な尿量が得られるまで透析を続行しましたが、12月初旬に入り、透析の離脱が可能となりました。今回この患者さんは献腎移植という大きなチャンスを手にすることができました。今後透析治療が不要となり、日常生活における身体的および精神的な負担が減ることで、QOLの向上が期待されます。もちろん、腎移植を受けることで免疫抑制剤の副作用や拒絶反応のリスクはありますが、腎移植によって得られるメリットはそのリスクを凌ぐものと考えます。
今回献腎移植を施行するにあたり、手術部、ICU、麻酔科、循環器内科、看護部、血液浄化部、検査部、事務部門など多くの院内スタッフのご協力を賜りました。各科、各部署の皆様方に御礼を申し上げますとともに、今後島根県の移植医療のさらなる普及に努力してゆきたいと考えています。