乳がんにおけるセンチネルリンパ節生検の先進医療認可について

公開日 2009年04月01日

(平成21年04月:最新治療) 

乳腺・内分泌外科  板倉 正幸 

 現在、乳がんにおけるセンチネルリンパ節生検は、腋窩転移陰性早期乳がんに対して、腋窩リンパ節郭清に変わる手術手技として世界的に普及しつつあります。センチネルリンパ節とは、リンパ行性にがん細胞が転移する場合に最初に流れ着くリンパ節のことであり、乳がんの場合このリンパ節に転移がなければそれより先の腋窩リンパ節に95%の確率で転移がないことが証明されています。センチネルリンパ節生検で転移陰性であれば腋窩郭清を省略することの妥当性が医学的には認められており、その場合乳がん術後の患側上肢のリンパ浮腫の出現を予防することが出来、患者さんにとっては非常に役立つ治療法です。
 しかしながら我が国においては保険適応はなく、先進医療、臨床研究などとして行われているのが現状です。この検査には色素法とアイソトープ法があり当院では色素法にさらに赤外線蛍光カメラを併用する方法を用いて、センチネルリンパ節生検の精度の向上と時間の短縮を図っています。
 この検査に用いる検査薬(色素とアイソトープ)は、現在医薬品として国内で製造、販売されているものですが、センチネルリンパ節生検は新しいものであるためこのような使用法は認可されていません。従って今までは保険請求は出来ませんでしたが、このたび厚生労働省から当院での先進医療としての実施が認可されました。当院で行うセンチネルリンパ節生検に際して患者さんに負担していただく実費分の検査費用は検査1回あたり約63,000円となります。
 今後は、乳がんにおけるセンチネルリンパ節生検の保険適応を目指して、全国レベルでの安全性の臨床確認試験を継続して参りますので、引き続き皆さんのご理解とご協力をお願いいたします。