前立腺肥大症、尿路結石のレーザー治療を開始します

公開日 2009年01月02日

(平成21年01月:最新治療) 

泌尿器科 平岡 毅郎 ・ 井川 幹夫 

図1.ホルミウム・ヤグレーザー発生装置(バーサパルス セレクト 80W) 

 当科では2008年12月より島根県で初めて高出力のホルミウム・ヤグレーザー発生装置(バーサパルス セレクト80W)を導入しました(図1)。これにより、前立腺肥大症、尿路結石症の患者さんに最先端の治療を提供できるようになります。
 男性では加齢とともに尿が出にくくなる、回数が増えるといった排尿症状が出現してきます。その原因として最も多いのは前立腺肥大症です。前立腺は膀胱の遠位で尿道を取り囲むように存在し、この内腺部分が加齢とともに大きくなることによって、さまざまな排尿症状が出現します。軽症の場合は薬物治療が有効ですが、重症になりますと外科的治療が必要になり、従来は経尿道的前立腺切除術(TUR-P)が行われてきました。TUR-Pは70年前より行われており、確立された手術方法ですが、欠点として時には輸血が必要な出血や、低ナトリウム血症といった合併症が起こることがあります。これらの合併症は前立腺が大きいほど手術時間が長くなり、起こる確率が高くなります。1995年より海外でホルミウム・ヤグレーザーが前立腺肥大症の治療に導入され、1998年より本邦でホルミウム・ヤグレーザー前立腺核出術(HoLEP)が紹介され行われるようになりました。これは前立腺の内腺(前立腺肥大症で腫大する部分)と外腺の間をレーザーで切開、剥離し、肥大した内腺を膀胱内へ核出し(みかんの実を丸ごと皮から剥くイメージ)、専用の器具でその内腺を細切、吸引します(図2)。従来のTUR-Pと異なり、腫大した前立腺結節を完全に除去するために、再発の可能性は低く、また術中出血も少なくてすみ、術後の疼痛なども軽減されるなど多くのメリットがあります。また健康保険が適応されますので、手術費用もTUR-Pとほぼ同額です。

 また尿管結石に対しても、ホルミウム・ヤグレーザーを使用した砕石は有効であり、シスチン結石といった硬い結石に対しても十分な砕石効果が見込めます。また当科ですでに導入しているオリンパス社製の最新の腎盂尿管ビデオスコープ(URF TYPE V)と組み合わせることによって、結石の存在部位に拘わらず安全、確実に経尿道的尿管結石砕石術(fTUL)が可能となり、さらに最新の結石採取用のカテーテルを併用することにより、1回の治療で結石を完全に取り除くことも可能となります。
 以上、当科では前立腺肥大症、尿路結石に対して一層安全、確実な治療を提供する体制が整いました。これらの疾患を有する患者さんがありましたら、是非ご紹介ください。宜しくお願いします。


図2.ホルミウム・ヤグレーザー前立腺核出術(HoLEP)と経尿道的前立腺切除術(TUR-P)の比較説明
図2.ホルミウム・ヤグレーザー前立腺核出術(HoLEP)と経尿道的前立腺切除術(TUR-P)の比較説明