公開日 2009年09月01日
(平成21年01月:最新治療)
光学医療診療部 天野 祐二
従来、小腸の検査は極めて困難で苦痛の多いものであったため、消化器領域において小腸は暗黒の臓器と言われてきました。ただ、胃や大腸に比べて重大な疾患頻度が低かったこともあり、消化器専門医も小腸に関しては目を瞑る傾向にあったことは否めません。ところが、近年本邦では、非ステロイド性抗炎症薬やアスピリン製剤などによる抗凝固療法の症例が高齢者を中心に著しく増加してきたことや、炎症性腸疾患の症例が若年者を中心に徐々に増加している現実は、小腸疾患の著明な増加を意味するものであります。その結果、臨床の場において小腸の検診方法の改良・確立を促す動きとなり、そこで登場したのが、カプセル内視鏡とダブルバルーン内視鏡であります。カプセル内視鏡は記録装置が付いたベストを装着し、26×11 mm大のカプセルを服用するだけで、小腸の内視鏡画像を得ることができる大変負担の少ない内視鏡検査であります。(図1,2) 検査時間は2~8時間と人によって異なりますが、検査中の歩行は自由で、食事もできるという特徴を有します。従来の小腸内視鏡検査は、苦痛が大きくて合併症の危険性も高いものでありましたので、その簡便性・安全性は比べ物になりません。得られる画像も臨床的評価に充分耐えうるものであり、今後カプセルを用いた小腸の検査症例は飛躍的に増えるものと考えられております。一方、カプセル内視鏡で診断された病巣については、この度同時に導入となったダブルバルーン内視鏡(図3)による精密検査で、生検組織採取などによる確定診断のみならず、腫瘍治療や止血治療もダブルバルーン内視鏡で可能となりました。二つのバルーンを巧みに使用することで、従来の機種に比し、飛躍的な全小腸到達率を示します。
これらの機器が我が大学病院にやっと導入となり、昨年12月より検査が可能となりました。スタッフの技術研修も終えた今、今後はより質の高い小腸内視鏡診療が提供できるようになったことを御報告致します。