公開日 2007年04月03日
(平成19年04月:最新治療)
肝臓内科 古田 晃一朗・佐藤 秀一
近年、肥満人口の増加に伴い検診受診者の約30%に脂肪肝が見られるという現状です。非飲酒者の脂肪肝を非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fattyliver disease: NAFLD)といいますが、NAFLDは他の生活習慣病を合併することが多く、メタボリックシンドロームの肝臓における表現型といえます。良性の疾患として放置されがちなNAFLDですが、その約10%に予後不良な脂肪肝が存在することがわかっており、非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)といいます。予後良好な単純性脂肪肝との鑑別は現在のところ肝生検に頼らざるを得ません。ASTやALT値が低いからといってNASHを否定できません。NASHは一部が肝硬変へ進展するとされ、発癌例も報告されています。現在非常に注目されている疾患であり研究も活発に行われています。
そこで当科においても平成18年2月より毎週木曜日に生活習慣病肝臓外来を立ち上げました。肝臓は沈黙の臓器といわれ、NAFLDはほとんど自覚症状がないのが特徴であり問題でもあります。病識を持ってもらうよう十分に説明をし、肝生検も積極的に勧めています。現在NAFLDに対しての確立された治療薬はまだありません。当科としては肥満改善薬である防風通聖散、高脂血症薬であるストロングスタチン製剤などで治療を試みています。しかし、NAFLDがメタボリックシンドロームの一連の病態であることを考えると、食事療法と運動療法がまずは治療の基本になります。そこで臨床栄養部の方々に多くの患者さんの栄養指導をお願いしています。
消化器疾患といえども、NAFLDに関しては他の代謝疾患や循環器疾患の合併も多く、当科以外の先生方やスタッフの方々のご協力も不可欠であります。今後大学病院として良質なエビデンスを発信していくためにも、NAFLDに対する系統的な診療体系の確立が必要になってくると思われます。たかが脂肪肝、されど脂肪肝ということで、気になる方がいらっしゃればいつでも相談いただければと思います。