山陰初の前立腺がん永久挿入密封小線源治療を開始

公開日 2005年10月01日

(平成17年10月:最新治療) 

泌尿器科 井川幹夫 滋野和志 

 生活様式の欧米化、特に高脂肪食の摂取により前立腺癌が増加し、さらに前立腺特異抗原(PSA)を用いた検診などにより根治が可能な早期の前立腺癌が増加しています。これまで早期の前立腺癌に対しては前立腺全摘除術が第一選択で、当科でも多くの患者さんに行い、その手術件数は週刊朝日の増刊号「いい病院全国ランキング」に掲載されています。しかし、前立腺癌は高齢者に発生頻度が高く、合併症のため手術ができない患者さんもあり、また低侵襲治療への方向性から永久挿入密封小線源治療(brachytherapy)が注目されるようになりました。 
 Brachytherapyは「短い」を意味するギリシャ語の「brachy」を冠した造語で、正常組織の被曝線量を抑えて、放射線源をターゲットのごく近傍に置いて、大線量を投与する放射線療法です。実際には、放射線科の先生が計算された線量計画(図1)通りに小さなシード線源を超音波ガイド下に前立腺内に挿入して組織内照射を行うもので(図2)、入院期間が短く,身体的負担が少ないことが利点です。従来の外照射に比べ,直腸,膀胱の放射線障害の発生率が低くなります。米国では1990年頃からヨウ素125シード線源を用いたbrachytherapyが盛んに行われ,治療成績は前立腺全摘除術とほぼ同等と報告されており,最近では年間50,000人以上がこの治療を受けています。日本ではこれまで放射線取り扱い上の法的問題等のためbrachytherapyの導入が遅れていましたが、放射線障害防止法上の問題も解決し,2年前からヨウ素125シード線源を用いたbrachytherapyが国立病院機構東京医療センターで開始されています。Brachytherapyは中国地方では広島大学、岡山大学に次いで3番目、山陰では初の導入となり、他の治療法の充実もあって当科は前立腺癌患者さんのすべての要望に応える体制が整い、これからも山陰の前立腺癌センター的な役割を果すことができると確信しています。今後、PR活動を行って、県内はもとより県外の患者さんも対象としてbrachytherapyを行いたいと考えています。 

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図1.コンピュータで線量計画を立てる。

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図2.腰椎麻酔のうえ超音波ガイドに会陰部からシード線を源を挿入

 

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