経頭蓋磁気刺激: Transcranial Magnetic Stimulation (TMS) による治療について

公開日 2006年10月01日

(平成23年9月:更新)
(平成18年10月:最新治療) 

神経内科 教授 山口 修平・講師 小黒 浩明 

 TMSはファラデーの原理を応用し、通電した八の字コ イルを頭の表面に当てて磁場を大脳表面に発生させ、 大脳神経細胞に微弱な電流を誘発し神経細胞の興奮を起こします。1990年頃から実用化された安全かつ非侵襲的な脳の研究・治療機器です。刺激法には単発刺激法(single pulse)、連続刺激法(repetitive TMS:rTMS)などがありますが、5~20 Hzの高頻度刺激(刺激の強さが一定以上で脳局所への効果が強い)を用いて連続(反復)刺激を行うrTMSは神経難病の治療においてある程度の治療効果を有することがわかってきました。
  神経内科疾患におけるTMSの治療効果はここ数年の文献報告によると、パーキンソン病(3ヵ月後に運動能力などが30%程度アップ)、脊髄小脳変性症(3週目に運動失調症状の改善が得られた)などの治療効果報告があります。機序は、前頭葉の血流増加、線条体のドパミンレベルの増加、小脳・脳幹の血流増加などが想定されています。治療スケジュールは、例えば「「パーキンソン病では5Hzの10秒間刺激を10回繰り返し、週に5日間合計2週間実施する」というように、ある程度の期間じっくり継続します。安全性についてですが、大脳を刺激するため「てんかん治療中の患者さん」は治療対象外となります。他に、「心臓ペースメーカー挿入後、妊娠、三環系抗うつ剤服用中、頭蓋内圧亢進」なども治療適用外となります。脳卒中(脳梗塞、脳出血)後遺症の患者様の治療としては当科は行っていません。 

 

 

 

磁気刺激治療:
八の字コイルを頭部に当てて磁気刺激