消化管腫瘍に対する新しい内視鏡診断・治療-NBI・ESDについて

公開日 2007年04月01日

(平成19年04月:最新治療) 

光学医療診療部 天野 祐二 

 内視鏡診断学の進歩により、消化管における早期がんの発見率が大きく向上しております。従って、早期消化管がんに対する治療は、高齢化社会の進展とともに、内視鏡による治療の比重が高まってくるのは当然のことであります。当院における早期胃がんおよび早期大腸がんの内視鏡治療症例数の推移を図1、2に示しますが、他施設に比して著しい増加率を示しております。  

 最近、新しい消化管がんの内視鏡治療としてESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)なるものが導入され、急速に普及しております。ESDによる治療の特徴は、より大きな病変を確実に内視鏡的切除できることであり、従来では、直径数cmまでの病変が一括切除の限界と考えられておりましたが、この方法は10cmを越える病変の一括切除も可能にしており、再発率を高度に抑制できるなど、増加する早期消化管がん症例に対応する優れた治療法として位置づけられています。  

 私共の施設でも、早くよりこのESDを取り入れておりましたが、この度、ESDをより確実・安全に行うことを可能にする二つの機器が当部門に導入されました。NBI(Narrow Band Imaging) 内視鏡とVIO高周波凝固装置であります。前者は特定の波長を強調した画像をコンピューターで合成することにより、病変の存在と正確な病変範囲の同定や病変の深達度を診断できる新世代の内視鏡装置です。また、後者は超高圧電流を用いることにより、出血のない迅速な切開・剥離を可能にする電気メスの一種であります。この二つの装置を組み合わせることで、早期消化管がんの内視鏡治療をさらに充実した、きめ細やかなものにしていくことが可能であります。今後、私共も更なる研鑽を重ねつつ、新世代の高度な内視鏡治療を安全な状況で提供していく所存であります。

早期胃がん内視鏡治療症例数の推移
図1 当院における早期胃がん内視鏡治療症例数の推移

	早期大腸がん内視鏡治療症例数の推移
図2 当院における早期大腸がん内視鏡治療症例数の推移