骨転移の新しい治療薬が使用できるようになりました

公開日 2016年12月21日

放射線治療科    科長   猪俣 泰典 (いのまた たいすけ)

 骨転移は肺がん、乳がん、前立腺がんなどで特に多く見られます。骨に転移すると強い痛みが高率に生じます。骨転移の治療薬はがん細胞によって起こる破骨細胞の異常な骨吸収を抑える骨代謝修飾薬剤が中心で、疼痛の軽減や骨破壊を防止する目的で使用されていますが、がん細胞に障害を与えることはほとんどありません。
 このたび、これらの薬剤に加えて抗腫瘍効果を狙った新しい骨転移治療薬である塩化ラジウム-223(ゾーフィゴ®)が日本でも用いられるようになりました。ラジウムは体内でカルシウムと似た代謝を行うので、骨転移病巣に集積します。本薬剤は壊変してα線を放出するのが最大の特長です。α線の飛程距離は50-80μm と短いので骨髄や周囲の正常組織への影響が少なく、しかも生物学的作用が大きいので効率よくがん細胞を破壊することが出来ます。
 ゾーフィゴ® は前立腺がんの骨転移(図1)のうち去勢抵抗性のものに対して適応が認められています。本薬剤はがん細胞を直接破壊して生存期間を延長することが示されており(図2)、さらに他の薬剤と同様に疼痛の緩和・防止に対しても効果が期待できますので、この点が従来の薬剤と大きく異なります。用法は静注にて4 週間隔で最大6 回まで投与できます。当院でもゾーフィゴ® を使用するにあたって施設基準を満たすための準備を進め、本年11 月から使用することが出来るようになりました。ゾーフィゴ® などの放射性物質を用いた治療は放射線治療科で行っています。
 以上ご紹介しましたように、骨転移の治療薬もさまざまな病態に応じて使い分けることができる時代になりました。


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