クローン病の複雑痔瘻(じろう)に対するアロフィセル治療を開始しました 

公開日 2023年04月19日

 クローン病とは、主に10歳代~20歳代の若年者にみられ、主に大腸や小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍をひきおこす原因不明の疾患のひとつです。下痢が多いことや直腸に潰瘍ができるため、クローン病は痔瘻(じろう:肛門内の病変から肛門の周りの皮膚までトンネル状に穴が通じている状態)を合併することが多く、複雑性で難治性であるのが特徴です。
当院消化器外科では、2021年9月に製造販売承認を取得した「アロフィセル」を用いた痔瘻の手術を2023年2月に開始しました。
 痔瘻が出来ると痛みや排膿などの症状を繰り返すようになり、患者さんの大きな負担となります。これまで痔瘻に対しては、シートン法という外科的治療(膿の通り道に医療用チューブ等を通し、チューブを通して排膿を促し自然閉鎖を待つ方法)やクローン病に対する薬物療法による間接的な治療などが行われてきました。しかし、これらの治療が無効である場合、人工肛門が必要になる方もいます。
 アロフィセルは健康成人の皮下脂肪組織から分離した幹細胞を培養して作られた再生医療等製品に該当し、注射で投与することで免疫調整作用と抗炎症作用を発揮するため、痔瘻を閉鎖する直接的な治療法です。すべての方に適応できるわけではありませんが、強力な治療の選択肢がひとつ増えました。
 今後、アロフィセルによって痔瘻の苦しみから開放される方がひとりでも多くなるよう尽力いたします。


       

◆問い合わせ先

消化器外科 外来 電話:0853-20-2384