公開日 2023年05月08日
新型コロナウイルス感染症などに対する国産のワクチン・治療薬の開発拠点である、新興感染症ワクチン・治療用抗体研究開発センター及び医学部生化学講座(病態生化学)は、ウイルスを用いず、かつ短時間で簡便に、ウイルスの感染力や毒素の活性を中和し、感染、発症や重症化を防ぐことができる抗体(中和抗体)を測定する方法(図1)を、全世界のいくつかの研究グループと同様に開発しました。野生株ばかりではなく、デルタ株・オミクロン株などの変異株のスパイクタンパク質(ウイルスの表面のタンパク質)を用いることで様々な変異株に対応して正しい中和抗体を測定することができます。
中和抗体とは、新型コロナウイルスの場合、スパイクタンパク質とウイルス受容体であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)というタンパク質との結合を阻害することができる抗体のことで、ウイルス感染リスクを減少させる可能性があります。したがって、特に医療従事者や基礎疾患保持者、高齢者等において抗体の中和活性能力を測定することは重要です。
ウイルスを用いた中和抗体の測定は、ウイルスを培養細胞に感染させる必要があるため、感染のリスクを伴うだけでなく、煩雑であり、特別な施設と時間のかかる測定法です。また、これまで実施されてきた抗体測定(図2)では、スパイクタンパク質に結合する抗体量を調べることが可能で、測定された抗体量と中和活性の間には一定の相関が認められることも知られていますが、抗体の中にはスパイクタンパク質とACE2との結合を阻害しないものも含まれています。ウイルス感染に対する抵抗力の強さを正確に判断するためには、やはり中和活性を持つ抗体量を測定する必要があります。
本開発には、島根県の令和4年度技術シーズ育成支援事業の支援をいただきました。
◆問い合わせ先
生化学講座病態生化学 研究室 電話:0853-20-2127