公開日 2023年06月12日
心不全はさまざまな病気や高血圧などにより心臓に負担がかかることで生じますが、超高齢社会の到来に伴い、弁膜症を原因とする心不全症例が増加しています。高齢者に多い弁膜症の代表的なものが、大動脈弁狭窄症(心臓の弁が正常に開かず、心臓から全身に血液が送り出しにくくなる病気)と、僧帽弁閉鎖不全症(弁が正常に働かず心臓の中で血液が逆流する病気)です。
大動脈弁狭窄症に対しては当院でも2018年からTAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)を実施し、高齢者の大動脈弁狭窄症治療が大きく改善しました。今回は体に負担の少ない低侵襲手術の第二弾として、僧帽弁閉鎖不全症に対する MitraClip(マイトラクリップ:経皮的僧帽弁接合不全修復術)を開始いたしました。
MitraClipは2003年に世界で初めて臨床応用され、日本でも2018年に保険適用されて以来、2022年末までに約7000例がこの治療を受けています。最大の利点は低侵襲性(体に対する負担の少なさ)で、通常の心カテーテルのように太ももの付け根の大腿静脈からカテーテルを挿入し、逆流を生じている部分を直接クリップでつまむことにより僧帽弁の逆流を軽減します。開胸や人工心肺を必要としないため術後の回復が非常に早く、経過が良ければ手術翌日には歩行開始し、1週間程度で退院可能です。現在、日本では外科的手術が高リスクな心機能低下症例や高齢者の方がMitraClipの対象とされています。
当院は2023年2月1日に島根県で初めてMitraClip実施施設の認定を取得し、総合ハートセンターで
3月からMitraClip を開始いたしました。島根県にもこの高度先進医療を安全に導入すべく、島大病院ハートチームが一丸となって臨んでいます。
◆問い合わせ先
循環器内科 医局 電話:0853-20-2249