【研究紹介】乳児期発症神経変性疾患の遺伝子治療に向けた研究

公開日 2023年10月02日

 近年、新たな乳児期発症神経変性疾患として、ヒトCytosolic carboxypeptidase (CCP) 1 遺伝子の異常に起因する神経変性疾患(以下、CCP1 神経変性疾患)が多数報告されています。これまでに報告された患者は、すべて乳児期に発症し、主症状は重度の運動発育障害および知的障害で、ほとんどの症例で小脳萎縮とそれに伴う小脳失調症や末梢神経障害、下位運動ニューロン障害がみられます。遺伝子変異による障害の発生は、疾患モデルマウスによる実証研究でも示されています(図1)。

 ほとんどの神経変性疾患においては、いまだ有効な治療法が確立されていません。当研究室では、これまでも疾患モデルマウスの小脳におけるCCP1 の発現量が生後早期に有意に減少していることや、運動発育障害の原因となる小脳内のプルキンエ細胞の異常を明らかにしてきました。さらに現在は、最新のゲノム編集技術によって疾患型CCP1 変異モデルマウスを新たに作製し、有用な遺伝子治療ツールとして注目されているアデノ随伴ウイルスベクターを用いて、CCP1 神経変性疾患の治療法の確立を目指した研究を行っています。

 本研究で得られる知見が、世界で初めてとなる乳児期発症神経変性症の治療法の確立に寄与すると期待されます。

プルキンエ細胞


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