【研究紹介】免疫療法を組み合わせたがん再発防止治療について

公開日 2023年12月07日

 日本人の2人に1人が罹患するがんの治療について、これまで様々な治療法が開発されてきました。近年では、がんに対する免疫細胞の攻撃を活性化させる「免疫チェックポイント阻害抗体療法」や、遺伝子操作により普通の免疫細胞をがん細胞だけ攻撃させるようにする「CAR-T 細胞療法」といった、がん免疫療法が注目されています。

 

 一方で、がん細胞死を誘導する治療として、抗がん化学療法剤・分子標的薬・放射線療法があります。これらの治療によって、がん細胞死を誘導することができますが、一部のがん細胞は生き残ります(図1)。これらの細胞は、正常細胞が加齢に伴い“老化“ する場合と同じ特徴を持つため、治療誘導性“老化”がん細胞と呼ぶことができます。これらの細胞は、増殖を抑制・停止することにより治療抵抗性を獲得し、さらに様々な炎症を生じさせるタンパク質を産生することによって、がんの再発・転移を促すと考えられています。しかし、この治療誘導性“老化”がん細胞は、別の見方をすると、がん細胞としての活力が低下しており、免疫療法にとって好都合な細胞とも言えます。

 

 そこで免疫学講座では、抗がん化学療法剤・分子標的薬による1st punch と、その後2nd punch として免疫療法を組み合わせた「one-two punch」の戦略で、がんの再発を防ぐ治療モデルを考案しました。治療効果を高めるためには複数のがん治療の併用が有効だからです。

 
 現在、その有効性を試験管内での実験やマウスモデルを用いた研究で検証を進めており、がんの再発を効果的に防ぐことができる複合的がん治療法の確立に日々取り組んでいます。
 

onetwopunch戦略


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