島根大学医学部附属病院

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秋からはじめる!お肌の乾燥対策

秋からはじめる!お肌の乾燥対策

カサつき、ゴワつき、かゆみや赤みなど、秋から冬にかけては乾燥による肌トラブルが起きやすい季節。乾燥肌が引き起こすリスクや、肌のお手入れ方法について、当院レーザー外来の皮膚科専門医、千貫祐子准教授にお話を伺いました。

 

乾燥はさまざまな肌トラブルを引き起こすもとに!
早めの対策で秋冬もうるおい肌で過ごしましょう

 

秋冬の湿度の低下や室内の暖房が
お肌の水分量を奪う!

私たちの肌は、「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層から構成されており、表皮のもっとも外側にある「角質層」の水分量が20〜30%の水分を保持している状態であれば、潤いのある健康的な肌といえます。
しかし表皮は外界の影響を受けやすく、1年を通してもっとも湿度が下がる秋から冬にかけての空気の乾燥、加えて室内での暖房器具の使用によって、表皮の水分はどんどん奪われ、乾燥肌を招いてしまうのです。

 

見た目の問題だけじゃない
乾燥肌はリスクがいっぱい

では、肌が乾燥することでどんなデメリットがあるのでしょうか? 顔のシワや吹き出物など、見た目の問題ももちろんですが、実は乾燥肌は、さまざまなリスクを引き起こす可能性があるのです。
皮膚というのは私たちにとっていわば「バリア」です。乾燥によりこのバリアが傷つけられると、外界のアレルギーの原因となるアレルゲン(抗原)が体内に入ってきてしまい、かぶれや炎症といった皮膚炎を起こしたり、場合によっては食物アレルギーを引き起こしたりする恐れもあります。食物アレルギーと皮膚は一見関係なさそうに思いますが、多くは皮膚からの侵入をきっかけにアレルギーが起きることが分かっています。
お肌の水分量や線維というのは25歳あたりを境に年々低下していくといわれますが、近年は若い方やお子さんにも乾燥肌が増えてきています。特に「アトピー素因(アレルギーになりやすい体質)」のある方や乾燥肌のお子さんは、しっかり保湿をして皮膚のバリアを保つことをオススメします。実際、アトピー素因のある子どもたちに保湿をおこなった結果、アトピー性皮膚炎の発症の予防に繋がったという報告も出ています。乾燥はまさに「百害あって一利なし」なのです。

 

肌質に合うものを選び
暮らしやおしゃれを楽しんで

日々のケアや市販の保湿剤などで乾燥肌が防げているうちは良いですが、かゆみや赤みが酷くなるなど皮膚炎の症状が出はじめたら、皮膚科を受診してください。
皮膚トラブルを起こすと不快なだけでなく、お化粧をするのも怖くなったり、おしゃれを楽しめなくなったりと、毎日が憂うつになりがちですが、敏感肌の方に向けた化粧品もたくさん出ています。諦めずに肌質に応じて使えるものを探し、乾燥肌対策をしながら、毎日の生活やおしゃれを楽しみましょう。悩んでおられる方はお気軽にご相談ください。

 

快適な湿度はおよそ40〜60%。 秋冬の乾燥時期は、洗濯物の部屋干しや加湿器などで快適な湿度を保ちましょう。

 

ひとくちコラム

乾燥と同じくらい怖い「紫外線」

お肌の大敵はズバリ乾燥と紫外線です。日差しが弱くなる秋冬はつい油断しがちですが、特に雪が積もっている時の太陽の照り返しはかなり強いです。肌が日焼けをすると、乾燥する上に皮膚の免疫を落とすので、皮膚がん予防のためにも日頃から意識を持って紫外線対策をおこなってください。

 

今日からはじめる!
カサカサ乾燥肌を防ぐ日々のセルフケア

乾燥肌を防ぐためには、やはり日々の対策が一番効果的!
正しいセルフケアをおこなって、秋冬でもうるツヤ肌を目指しましょう!

 

1. 市販の保湿剤は、
成分を見て目的に応じて選んで

[保湿剤の種類]

エモリエント

皮膚から水分の蒸発を防いで皮膚の水分を保持し、皮膚を柔らかくする作用を持つ。皮脂膜に相当する役割を果たす。

  • 天然油脂
  • 長鎖脂肪酸
  • 脂肪酸エステル
  • 白色ワセリン
  • プロペト
  • ラノリン
  • リン脂質 など
モイスチャライザー

皮膚に水分を与え乾燥から守る吸湿性の高い水溶性の成分を補うことで、保湿作用を発揮するもの。

  • 乳酸
  • グリコール酸
  • アミノ酸
  • グリセリン
  • 尿素
  • ヘパリン類似物質
  • ヒアルロン酸
  • セラミド
  • コラーゲン など

保湿剤は大きく分けて2種類、「エモリエント」と「モイスチャライザー」に分類されます。エモリエントは水分が逃げないよう肌に「蓋」をするイメージ、モイスチャライザーは水分を与えて保湿するイメージです。エモリエントは低刺激なので、肌が弱い方やお子さんにもオススメです。

2. 基礎化粧品は
自分の肌質に合った使い方を

クレンジングや洗顔料で顔を洗った後にはしっかり保湿を! とはいえ、化粧水、美容液、乳液など、基礎化粧品のフルコースがベストというわけではなく、例えば油分の多いクリームは、皮脂の多い方にはベタつきや吹き出物の原因になることも。評判の良い化粧品でも、自分に合うとは限りません。自分の肌質に合わせて選び、使っていて気持ちが良いと感じるものを使用しましょう。

3. ゴシゴシ洗いはお肌の大敵!
摩擦をさけてやさしく洗うのが◎

顔や身体を洗う時は「こすらない」がポイント。摩擦により皮膚のバリアが破壊されて乾燥につながるので、乾燥しやすい方やアトピー性皮膚炎の方は特に気をつけましょう。タオルでの擦り洗いもオススメできません。お肌のためを思うなら、手と泡でやさしく洗うだけでも十分きれいになります。また熱めのお湯も肌が乾燥しやすくなるため、38〜40℃くらいがベストです。

4. 顔以外の保湿もしっかりと

顔以外に露出している部分も、乾燥が起きやすくなります。特にひじ、ひざ、かかとやすねは乾燥しやすいので、しっかり保湿を。また、爪も手と同じタンパク質でできているため、水分が少なくなると割れやすくなったり線が入ったりとトラブルのもとに。手や爪も冬は荒れやすくなるのでクリームなどで保湿をしましょう。

 

皮膚科 副診療科長/准教授
千貫 祐子

1996年に島根医科大学医学部を卒業し、同大学病院皮膚科学講座に入局。
2006年に皮膚科専門医、2013年に医学博士を取得し、2020年に島根大学医学部皮膚科学講座准教授に就任。
2022年にアレルギー専門医、2023年にアレルギー指導医を取得し、
現在は島根大学医学部附属病院アレルギーセンター副センター長を兼任。


しろうさぎ74号より(2023年10月発行)

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